話しませんか3
「真珠女」 奈帆さん、憂美さんへの手紙
第三章 再会
ドアの向こうに佇む女性が見えた。
『え?!』
俺は考える間もなく、表に飛び出した。
『奈帆さん!』
夢にまで出てきた女性(ひと)だ!
「奈帆さん?奈帆さん!」
メガネもかけず、珈琲カップを持ったまま飛び出してしまった。
「奈帆?え?奈帆?奈帆さんなの?」
帰り支度を終え、ゆっくりしていた憂美さんがつぶやく。
心ここに非ず、といった感じだ。奈帆さんがいることが信じられないようだ。
散々探し廻って見つけられ無かった、奈帆さんが、目の前にいるのだから、無理もないことだ。
「憂美さん、憂美さん!久しぶり!」
「どこ行ってたのよぉ!さんざん…」
奈帆の満面の笑顔と、憂美の涙顔が相反していて笑ってしまいそうだった。
「まあまぁ、入って!」
「さぁ、奈帆さん覚悟しなさい」
強い口調で憂美さんが口を開く
「奈帆、ずっと会いたかったのよ。置いて行った指輪、返すからね、いったいどこにいたの、何していたの!?」
奈帆さんは、渡された指輪を左手中指に添えた
「ときさん、お店の奥は前のままね」
「奈帆答えて!」
奈帆さんは、俺と憂美さんを交互に見て話し出す。
「私も良く分からないのよ、何かがあって、空が青いなってところまでは、覚えているの」
「ふざけないで!」
憂美が気色ばむ。
「ううん、本当なの…」
俺は、「まぁまぁ、せっかく再会出来たんだから、ゆっくり話そうよ、 話しません?」
「奈帆さん、肌がより白くなったわね。ときさんなんか、急に老けたわよね」
「確かに」
そう、言わざるおえなかった。
俺だけ時間が早送りしたみたいに、老け込んできた。心は40代なのに。
「憂美さんは相変わらず若くて綺麗ね」
「奈帆、私はずっと奈帆の事を考えているわ。貴女を愛しているから。」
奈帆さんは、潤んだ目で憂美さんを見つめた。
そして、何かを悟ったように、頷いた。
「奈帆さん、生きてるって素晴らしいだろ」
俺の想い、全てを吐露した。
奈帆さんは、そっと笑みを浮かべ、
「ちょっとお化粧、直してくるね」と言って席を立った。
来店した時に感じた、生気を失ったような姿はもう無い。
真珠の指輪を愛おしそうに触れながら歩いて行く奈帆の姿を横目に、俺と憂美さんは、3人が再会出来た喜びを語りあった。
時間が経って、奈帆の椅子は冷えてしまったが…、指輪はここには無い。
ここは、都会のオフィス街の裏道にある珈琲屋「時」
その想いが、シンクロした時だけ出会える夢のお店です。
第三章終わり…
※この文章は、小説「真珠女」作者、春野憂美さんの許可・監修を得て、投稿させて頂いています。