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九州ユース合唱団2024 in福岡

10周年のQYC

QYCこと九州ユース合唱団。今年も無事に合宿と演奏会(9月23日)を終えました。

九州ユース合唱団は、
①九州から新しく若い合唱文化を発信するために演奏会を行うこと
②合宿で共に生活しお互いの親睦を深め、文化を知ること
③学び得たものをそれぞれの地域に還元すること
を目的として企画された公募による合唱団。

30歳以下のメンバーは、九州を中心に日本全国から集い、3泊4日のリハーサルキャンプ(合宿)を経て、演奏会を開催したのでした。
 発足から10年。発足時は現役ユース指揮者として使って頂いた私も、いつの間にかユースではなくなり…それでも指揮者として関わらせて頂いており、嬉しい限りなのです。熱き若者たちと超短期決戦で個性豊かな楽曲を練る経験は、他では得られない貴重な経験です。


実行委員長今釜先生のリハーサル
指揮者らしい写真がありましたわ

取り組んだ楽曲

九州ユースは、合唱音楽における「民族性」を大きな柱としてプログラムを組んでいます。今年はこちら。

実行委員長、今釜亮先生は
・「混声合唱のための『唱歌』」より全3楽章(千原英喜作曲)
・Gamelan(シェーファー作曲)

音楽監督の松原千振先生は
『貝殻』より「冬」、「貝殻」、「冬の最後の日暮れ」(新美南吉詩、清水修作曲)

そして私は、大中恩先生の編曲による
「西国のしらべ〜七つの九州民謡による〜」から抜粋で演奏しました。
 ・博多子守唄(福岡)
 ・稗つき節(宮崎)
 ・鹿児島おはら節(鹿児島)
 ・新地節(佐賀県)

幻の曲?「西国のしらべ」


 大中恩先生といえば、「サッちゃん」「おなかのへるうた」など誰もが知る童謡用の作曲者。合唱でも「島よ」を筆頭に数々の名曲を残しておられる大作曲家であります。生誕100年のメモリアルイヤーである今年は、記念演奏会も開催されるなどあちこちで大中先生の作品が多数演奏されています。 
 数年前、大中恩先生の作品一覧を拝見している中で発見したこの作品。大中先生に「民謡」や「編曲」のイメージを持っていなかったのでとても驚き、大中恩記念館にお尋ねをしたところとても丁寧に対応してくださり、今回の我々のために、絶版となった楽譜の手配や演奏の許諾手続きにまでたくさんのお力添えを頂きました。本当にありがとうございました。
 大変新鮮に響く、おもしろい作品でした。「幻の作品?」とも言うべき貴重な楽曲の演奏。先生方も「この作品とてもおもしろいね」と興味津々に見守ってくださる中、若者たちと、九州の、民族性をもつ音楽を紡ぎながら、私たちの知らなかった大中先生の表情に触れることができたような気がしています。
 中でも「鹿児島おはら節」は、私にとってふるさとの音楽。原曲の持つ軽快さ愉快さがとても生かされた編曲で、ふるさとの音楽を通じて若者たちが楽しそうにはしゃいでいる様は、鹿児島県民としてとても嬉しい光景でした。
 地元福岡の民謡であり子守奉公の恨みつらみや過酷さが滲み出た「博多子守唄」、労働歌でもあり愛のうたでもある、大変に旋律の美しい「稗つき節」、過酷な干拓労働を少しでも楽しく行おうと歌われていたらしい軽快な「新地節」。それぞれがユニークなキャラクターを持っており、メンバーも非常に楽しみながら取り組んでくれたように感じています。「九州」の冠を被り「民族性」を掲げる我々ですから、メモリアルイヤーの今年、我々こそ歌うべき作品だったと確信しています。我ながらとても良い選曲をしました(自賛)。実際にこの作品の演奏を目当てにご来場されたお客様もおられたようでした。この作品がここから改めて注目を集めることになればいいなと思う再演者です。私も早速鹿児島での再演を目論んでおります。お楽しみに!


コンサート直前リハの様子。みんないい顔してるじゃないか。

現在地を知る


 こうした公募合唱団と対峙すると、いやでも自分の現在地を知ることになります。
 初めましての方も少なくない集団を前に、指揮者としてコミュニケーションをとりながら音楽を紡ぐことができるのか。普段からご一緒している合唱団は、良くも悪くも私の指揮に「慣れて」いるのでお互いにカバーし合えることも多々あるけれど、このような企画ではそうはいかない。振ったけど全然思ったように伝わらない、なんてことが多々あるわけです。私が松原先生から学んできた合唱指揮は「どんな合唱団ともセッションできる指揮」だと思っていて、それができない時は指揮する私に何かしら問題があると言うこと。自分の不出来を突き付けられるのは苦しいけれど、課題をクリアし、欲しい音が返ってくると大きな喜びを得ることにもなります。今回もそうした苦しさと喜びを何度も得ることができました。こうした場では、たくさん傷を負って帰るくらいがいい。今の私には何ができて何ができないのか、自身の現在地をしっかり確認して帰ってきたのでした。参加したメンバーも、一人ひとりが自分の不甲斐なさに苦しんだ時間がきっとあったと思うのだけど、それでいいのです。むしろそうでなくちゃ。傷を負った分だけ強くなる。かの有名なサイヤ人理論です。私もそうなって、また来年、皆さんと再会したい。

名曲「草原の別れ」

 演奏会のお別れには、アンコールとして大中恩先生の「草原の別れ」を松原先生の指揮で演奏。メンバーに加わってこの曲だけ歌わせてもらいました。

 「草原の別れ」は、鹿大ポリ出身の私にとっては非常に大切な曲。
 ポリの常任指揮者でいらした鎌田先生が指揮するこの曲が本当に好きで、絶妙な間合いなどベテランの描く味わいがたまらなくて、いつか僕もあんな指揮ができるようになるだろうかと憧れ続けてきた私。もちろんまだ遠く及ばないのだけど、鎌田先生はお亡くなりになり、もうご一緒することは叶わない。そして2024年、その後に出会い田舎者の私を拾い育ててくださった松原先生の指揮で、この曲を歌う。
 当時の師匠の指揮で歌うことがたまらなく好きだった曲を、現在の師匠の指揮で歌う。ちゃんと歌えるはずもなく。密かに涙、涙でした。

ステキな合唱団

 無事に演奏会を終え、解散した九州ユース合唱団2024。
 間違いなく、良いチームでした。
 難曲にもめげず、励まし支え合い、演奏会までやり切った勇者たち。
 彼らとご一緒できたこの秋のことを胸に抱き、私も鹿児島で励みます。
 強く美しくなって、また会おう。

 ステキなメンバーたち、運営に奔走してくれた実行委員たち、そして何よりご指導くださった松原先生、今釜先生に心より感謝申し上げます。
 また、ご来場くださった方々、また、寄付という形でご支援くださった方々、本当にありがとうございました。
 合唱のこれからを担う熱い若者たちがスクスクと着実に育っております。

みんな、また会おう!

終演後。キリッともできる
きっとこっちが本当の姿



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