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【開催報告】コーラス・エクスポin鹿児島2024〜西に沸る若き合唱団たち〜

無事に開催、終了しました


 PRしておりました私の自主企画「コーラス・エクスポin鹿児島2024」、2024年9月29日に予定通り開催、無事に終了しましたことをご報告します。


西に沸る若き合唱団たち


 鹿児島において「テーマに沿って、合唱音楽に関する博覧会のようでありたい」と企画運営してきた通称「エクスポ」。今回は「西に沸る若き合唱団たち」をテーマに、鹿児島、九州各地、そして遠くは広島から、若者が熱く活躍している合唱団に集って頂き、歌い合い聴き合う祭典となりました。
 「若者」をテーマとしたのは、学生合唱の次のステップとして大切なこの世代は、ライフステージの変化が多く、活動の「継続」が困難になることが少なくないから。この世代の合唱活動をさらに盛り上げるべく刺激すること、そして地域を超えて団体同士が出会い繋がり、互いに刺激し合うことを目指したのでした。

出演団体紹介


 熱演を披露してくださったのは6県より12団体!
 ご出演の御礼と、各団の今後のPRになるかもしれないことを願いつつ、ささやかにご紹介。

合唱団いろ(福岡)

 九州ユース合唱団でご一緒してきた友人が多く在籍している団で、彼らならきっと何か面白いことをやってくれるはずだ!と信じてトップバッターをお任せ。ラトビア民謡「Dindaru dandaru」を客席まで使った演出で披露し、演奏会の幕開けを飾ってくれました。指揮者を置かないスタイルながら、息の合ったアンサンブル。日頃から熱心に議論を重ね、練習時間を懸命に共有していることが分かる、そして面白いことやるぞという団のキャラクターを一人ひとりが愛して歌っていることが分かる、魅力的な演奏でした。そして同時に「我が抒情詩」では正統派とも言うべき厚みのあるアカペラもできることも判明。ユニークな音楽で突出することも、王道をじっくり聞かせることも出来る「いろ」。個性と集団性がバランスよく輝いている魅力的な合唱団です。

色鮮やかに、合唱団いろ。トップバッターを任せて大正解!

Q(九州)


 拠点を持たず、九州広域から集まるメンバーで成る「旅する混声合唱団」。今回は公募メンバーも加えた鹿児島・熊本・東京からの5人で周藤諭編曲の「四つのアイルランド民謡」全曲を演奏。無伴奏混声3部合唱という編成に、男声不足のQは助けられました。指揮者である私が、アイルランド民謡の旋律がとても好きで、団史上最少人数でダイナミックな音楽がしにくい現状を逆手にとって、やさしく美しい音楽を紡ごうと丁寧に向き合ったのでした。自団なので評価はしにくく、ある意味でこの日最も若者らしくない演奏だったかもしれませんが、お客様からの反応は上々で、「この日最もエモい」とのお言葉も頂いたので、私もメンバーもとても喜んでいます。

Q、アイルランド民謡をていねいに

Chor Gozar(福岡)


 よく知るメンバーばかりで、安心と信頼のゴサールさん。少人数ながら実力あるメンバーばかりの粒揃いで、いつも音圧のある熱い演奏をしてくれる彼ら。会う度にいつも言うけど、ギンガムチェックの衣装がかわいい。どこにいてもすぐ分かるゴサールの民。選曲がちょいとマニアックなところも楽しく、多彩なステージでした。この日は神奈川から参加のメンバーもいたそうな。「九州の合唱を盛り上げる」を掲げている彼ら。そのスローガンを大袈裟なものに感じさせない熱量が素晴らしいのです。引き続き注目のゴサール。彼らはまだまだ、歩く、歩く。

ゴサールのみんな。いつも熱く、そして衣装かわいい。

Belle famille(鹿児島)

 地元鹿児島より、ベルファミーユさん。2006年の発足以降、鹿児島の若手世代の先頭を走り続けておられる先輩方。先日ご出場の九州合唱コンクールでも披露した相澤直人作曲「混声合唱アルバム『歌われて』」より2曲を丁寧に演奏してくださいました。若者はライフステージの変化が多く活動の「継続」が難しいと先に申し上げた当演奏会ですが、こうして実際に「継続」を果たしているベルさんは、一つのモデルケースとも言える存在かもしれません。日本語を丁寧に紡ぎ表現する音楽はこの日もご健在でした。先輩方の背中を見ながら追いつけ追い越せの精神で、鹿児島の若手の合唱を共にひた走れたらと勝手に願っております。

鹿児島のこの世代を引っ張る、ベルファミーユ

合唱団ぽっきり西条組(広島)

 はるばる広島からの来鹿!合唱団ぽっきりのうち、東広島市を拠点とするメンバーで構成された編成なのだそう。まずはなんと言っても鹿児島県民の度肝を抜いた「タイヨーの歌」。鹿児島や宮崎に広く展開するスーパー、タイヨーの店内で必ず聞こえるあの曲が美しい合唱になって響く様に、驚きながらニヤニヤしてしまいました。しかもおはら節や茶わんむしの歌など有名な鹿児島の曲も引用されていて、鹿児島県民はとても喜びました。せっかく鹿児島で演奏するから、地元の方々に喜ばれる曲を演奏しよう!という、その気持ちが嬉しかった。
 また、千原英喜作曲「どちりなきりしたん」と信長貴富編曲「瀬戸の花嫁」では、合唱団として実力の高さを感じさせてくれました。私は特に、彼らの瑞々しい声に感激しました。無理のない、美しい声で歌われる、多彩な音楽。すごい若者たちがいたもんです。

なんと言っても「タイヨーの歌」

混声合唱団こけけ(鹿児島)

 地元発コメディ枠。イベント主催者であり彼らの指揮者でもある私の要求にしっかり応えてくれました。団名から鹿児島弁の彼ら。せっかく多くの合唱団が鹿児島に集うのだから、歓迎の意味も込めてご当地ソングに徹したプログラムを組みました。県民も知らない隠れた素朴な民謡「おいどんがちんけとき」、桜島との共生を愉快に歌った「灰かぐら音頭」は昭和歌謡風の演出で。そして県を代表するご当地ソング「茶碗むしのうた」ももちろん。
 歌詞の意味は他県の方々にはほとんど伝わっていないことと思いますが、鹿児島に来たからこそ味わえたおもしろい歌、おもしろい合唱団との出会いを喜んでいただけていたら幸いです。こういう合唱団があってもいいじゃないですか。
 (いろんなことを思い切ってやる彼らですが、実はみんなしっかり緊張していて、脈拍が上がっていたのでしょう、テンポが暴走気味で、指揮者はなかなかスリルを感じておりましたよ)。
 (そしてこけけの民よ。サスペンダーを弾く演出は私も聞いてなかったので驚いたぞ。事前に言っててくれよな。)

演歌歌手とコーラス隊wawawawa-
ご当地ソングに徹してコメディ枠をやり切ったこけけ。

Vocal Ensemble CAST(大分)

「コンサート前夜には鳥刺しを食べ、誰もお腹を壊さずに演奏するんだ」と参加が決まった時点から決意を語っていたCASTの皆さん。目標達成、おめでとうございました!(客席からも拍手が起きました笑)
 「合唱芸術としてのエンターテインメントを創る」を掲げるCASTさん、歌謡曲から合唱曲までを見事に演奏。特に1曲目の中島みゆきの名曲「麦の唄」は力強い演奏に特に皆じっと聴き入っていました。小規模であることを全く弱みと思わせない、一人ひとりから表現することへの意志を強く感じるグループです。次に会うときは、どんな音楽を聴かせてくれるだろう。またお会いしましょうね。

鳥刺しも演奏もしっかり満喫したCAST。

coro illuminare(宮崎)

 宮崎県で励む、コーロ・イルミナーレは、この日が団にとっての初ステージ。待機中の写真をご覧ください(↓)。喜びと緊張の入り混じった、なんて素敵な写真。どの合唱団にも初ステージがあったはずですが皆さん覚えていますか。イルミナさんにとってはこのステージが記念として胸に残り続けるのですね。
 団としては初ステージでも、経験豊富なメンバーなのだとお見受けします。本当に初ステージ?と思うほど、落ち着きのある、実によく練られた演奏でした。少ない人数で、ひょっとすると練習に全員が揃うことも簡単ではないかもしれない。パートが欠けた状態での練習もあるでしょう。それでも、彼らが懸命に丁寧に時間を共有して練り上げてきたことが分かる、素敵な音楽でした。ステージデビューおめでとうございました!これからどんどんとご活躍ください!

ステージデビュー直前のイルミナ。なんて愛おしい写真。


本当に初ステージ?宮崎よりイルミナ。

La Fontana(鹿児島)

 他に類を見ない、独自の路線を走るお姉様方。民族的な音楽を歌わせたら右に出る者はいないですね。グアテマラやベトナムでの演奏経験が活きておられるのでしょう、彼女たちが歌い出した途端、会場の空気は一変。ダンサーKikumuraのご活躍も相まって、異国情緒漂うひと時となりました。ひと口に合唱と言っても、世界には本当にいろんな曲がありますね。他国の音楽をこんなに自然に演奏して楽しく聴かせてくれるLa Fontanaは、とっても貴重な存在なのです。

会場の空気が一変。異国に連れ出してくれたFontana

合唱団いひゅうもん(熊本)

「いひゅうもん」とは、熊本弁で「かわった人」というとの意味なんだそう。ノルウェー民謡を歌いながらステージに集い、バスク民謡と日本の合唱曲までを披露。やりたいことが短い時間の中にギュッと詰まっていて、彼らが意欲的な合唱団であることが溢れ出たステージでした。
 特筆したいのは、合唱団とピアニストと指揮者の間に感じられた「信頼関係」。指揮者がピアニストと歌い手たちを信頼していること、また歌い手とピアニストが指揮者を信頼していることがよく分かる演奏だと感じました。集団で描く「合唱」において、ひとつのチームとしてとても自然に信頼し合っているからこそ、いひゅうもんさんの音楽には説得力があるのだと思います。納得の熱演でした!

貫禄すらある、いひゅうもん。

織りなす(鹿児島)

 今回唯一のジョイントチーム「織りなす」。鹿児島市で活動する「合唱団うたおり」さんと「女声合唱団Prunus」さんによるジョイント。どちらの団体も知る私にとっては「どこまで融合するのか」が大きな関心でした。
 いやー、合唱団って融合するんですねぇ。言われなかったら分からないかもしれないというくらい、自然に、見事に融合した演奏を披露してくださいました。どちらの良さもしっかり残った上で、混ざっていました。指揮者は「うたおり」の今村先生。私も日頃から大変お世話になっている、あたたかい先生なのです。先生を慕う方々も多いから、こうして彼女たちの高校卒業後の演奏活動にもつながっているのだと思います。
 MCでは「この日限り」とありましたが、もったいないですよ!定期的にやりましょう!などと外野は勝手に願っております。
 「織りなす」の織りなす音楽、お見事でございました。美しかった。

織りなす。この日限りなんてもったいない。

合唱団ぽっきり(広島)

 大トリは、待っていました「ぽっきり」!
 「一回一回の本番をその一回ぽっきりのように大切に演奏していこう」というコンセプトで熱量高く活動されている合唱団。指揮者は友人でもある縄裕次郎さん。彼らの演奏は以前に広島で拝聴したことがあり、その熱量に衝撃を受けたことのある私。今回、「あの『ぽっきり』が鹿児島で聴けるぞー!」と一番ワクワクしたのは私だったと思います。
 中国大会を終えて間もないお忙しい中での来鹿、そして熱演。曲目は木下牧子作曲「タラマイカ偽書残闕」より2曲。彼らが歌い出した途端に、客席が揺れたような気がしました。そうです、それを期待していました。集まった九州の合唱団に、鹿児島のお客様に、確かに衝撃を与えてくれたものと思います。確かに「一回ぽっきり」の熱演でした。

鹿児島が確かに揺れた。合唱団ぽっきり。

合同合唱

 これだけの若者が集うんだもの、やはり全員での演奏が必要だ!ということで、最後に「合同合唱」を。指揮者は、企画者特権で私と、広島の縄裕次郎さん。
 今年が作曲者のメモリアルイヤーであり、故郷や友との別れを歌った名曲である、大中恩作曲「草原の別れ」を私が。
 鹿児島の料理と焼酎の組み合わせが大好きなんだと熱く語った縄さんは、上田真樹作曲「酒頌」を選曲。ステージで若者たちと酒を酌み交わしたいと思ってこの曲を選んだのだそうです。

 練習ができたのは当日午前中の短い時間だけでしたが、これだけ熱い若者たちだもの、この日のこの顔ぶれだからこその熱演をお届けすることができたように思っています。ご清聴ありがとうございました!

大中恩作曲「草原の別れ」
上田真樹「酒頌」かんぱーーーい!
縄さんと並んでお辞儀したのはいつぶりだろうか。
合唱に熱き私たちを、これからもどうぞよろしくお願いします。

ご出演・ご来場・ご支援ありがとうございました!

 長々書いて参りました、開催報告もここまで。

ご後援くださいました、
  鹿児島県合唱連盟 様
  認定NPO法人かごしまアートネットワーク 様

 ご支援くださいました、
  鹿児島県合唱振興基金 様
  佐伯由紀子 様(パンフ等デザイン)

 そしてご出演くださった、皆々様

本当に、本当に、ありがとうございました。

またお会いしましょう!


終演後、夕映の桜島。
この景色を前に飲んだビールのことを、私はきっと忘れない。


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