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着こなしてこそファッション

今回のテーマ:ファッション

by    阿部良光

30周年を迎えたNYファッションウィークも9月、3年ぶり無事開催された。ランウエイで発表されるあのような進歩的かつ画期的な作品が、一体どのように普通の人々が日常着るのかといつも思うが、必ずしも実用ものばかりを発表するのがファッション・ショーに非ずというもの。デザイナーの謂わば社会に対するオピニオンリーダーたらんとする宣揚の場でもある。

NYでは日本人はセンスがいいと仲間内で言われている。なるほど若者が崩れたストリート系の格好をして街を歩いていても、なぜかあれは日本人とわかるのは、私だけではないと思う。一般的に小綺麗で清潔感があるからだろうか。

だからセンスがいいと言うつもりはないが、最近の日本人男性の多くは、メトロセクシャル(ゲイではないが美容やファッションに高い関心を持つ男性)系が多い。ユニセックスが言われて久しいが、女性物と思われるほどにフェミニンな格好をしている男性も少なくないし、それが似合っていて違和感もなく着こなしているようにも見える。この頃は男性でもメイクをする人がいるのは、その影響もあるのだろう。

因みに次世代の男性ファッション系と言われるユーバセクシャル(身の手入れやファッションに気を配り自信と思いやりを併せ持つ男性)傾向は、すでに始まってるそうな。

アメリカの友人が以前言った。日本人はセンスはいいのだけど、あれは着るのではなく乗っけているだけ、と言われてさもありなんと思った記憶がある。デザインそのものはユニークだけと、何かしっくりとこないと。元々着物の国という先入観からというわけでもなかろうが、汚れや位置ずれをしょっちゅう気にするきちんとした(?)国民性が、少し神経質そうでそんな印象を与えるのだろうか。

最近、宝飾系のリテールで働いた。流石ストリート系NYファッションのメッカ、イーストヴィレッヂが立地。相変わらず若者たちを中心に、ニューファッションの発信地ぶりを発揮しているとは言っても、そこはボヘミアンな土地柄、移民や昔から住むミリオンネアー、学生まで種々雑多な人々で溢れている。この店は一見さんや観光客より、地元に住む長きにわたって贔屓にしてくれている顧客が多い。

ある日、歩行器でやっと歩けるような太り気味の母親と、娘さんは娘さんでこれまたふくよか体質の二人がタクシーでやってきた。彼らも15、6年来のお得意さんという。批判を覚悟で言うと、この人がこんなネックレスを着けたいんだと思うような要求に、娘さんは一生懸命耳を傾けそれを叶えていた。聞くでもなく会話を聞いていると、家にいるだけでもそれを着けていたいという。心が和んで癒され、幸せな気分でいられるとのことだった。そしてそれに合うブレスレットも注文して帰った。

なるほど、洋服を着たりアクセサリーを着けるということは、もちろん外出用おめかしもあるが、基本的には日常を楽しむということで、それがオシャレに通じるのだろうと腑に落ちた。アクセサリーを物色する彼女たちの幸せそうな笑顔が、今でも忘れられない。

オシャレとは辛抱という人もいる。寒い冬に薄着で通したり、暑い夏にわざわざショールを巻いたりブーツを履いたり、格好をつけることからそう言われるわけだが、それはそれでありだろう。だがこんな客たちを目の当たりにすると、なんだかなぁ~の感じもしないではない。

ところで日本のTV局の女性アナウンサーのスカート丈が、申し合わせたようにドロンドロンの長丈。それにオーバーサイズっぽいブラウスを合わせるって、まさに乗っけている感じがするのだが、、あれは日本のTV業界の服装規制?



[プロフィール] 1980年10月自主留学で渡米。しょうがなくNYに住み着いた、”汲々自適”のほぼリタイアライフ。

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