ニューヨーク、ときどきDIARY

専門も趣味もまったく異なるライターたちが、パンデミックをきっかけに始めた日々の共同つれづれ日記。 ニューヨークに住む(住んでいた、時々住む)5人が同一テーマで綴るそれぞれのニューヨーク愛。 みんなが知ってるニューヨーク、誰も知らないニューヨークをまるごとお届け!

ニューヨーク、ときどきDIARY

専門も趣味もまったく異なるライターたちが、パンデミックをきっかけに始めた日々の共同つれづれ日記。 ニューヨークに住む(住んでいた、時々住む)5人が同一テーマで綴るそれぞれのニューヨーク愛。 みんなが知ってるニューヨーク、誰も知らないニューヨークをまるごとお届け!

マガジン

  • マイキーとイーストヴィレッジの住人たち(リレー小説・無料編)

    ニューヨークに20年以上住んでいる(住んでいた)5人のライターたちが、リレー形式でひとつの物語を書くことになりました。5人が順番に物語を繋げていくという実験的な試みです。 他のライターたちが物語をどんなふうに展開していくのか、まったく予想がつかないので、「あれ、そっちですか?」のようなことも頻繁に起こります。また、フィナーレは5人それぞれが書くので5通りの結末が待っています。そんな行方の知れない旅をぜひ一緒に楽しんでください。あなたはどの結末が気にいるでしょうか。 このマガジンは毎週木曜日更新。フィナーレは5エピソード一挙公開予定。1クール(5エピソード)は無料でお読みいただけます。2クール目(5エピソード)および5通りのフィナーレは100円ですべてお読みいただけます。

最近の記事

NYリレー小説プロジェクト

第一話から読む マイキーとイーストヴィレッジの住人たち 第4話(リレー小説・無料編) 第五走者: 阿部良光 チヨはこの頃、一人思いに耽ることが多くなっていた。人生90年も生きていると、過去の全ての思い出がセピア色になって、感傷もなくサラリと受け流すことができていたはずなのに、両親の告別の日や無沙汰でも日本人の友人たちの消息が、急に気になり出し始めていた。マイケルのことはもちろん、楽しかった若い頃を、節目ごとに思い出してはいたが、どうして長い間交信がなくなっている日本の友

    • NYリレー小説プロジェクト

      第一話から読む マイキーとイーストヴィレッジの住人たち 第4話(リレー小説・無料編) 第四走者: 河野洋 「目を覚まして、マイキー!」チヨは、自分の体温を測るかのように、じわっと汗ばんだ額に右手の甲を強くあてた。「ああ、よかった、本当によかった。わたし、夢を見ていたのね...」   壁時計の秒針より明らかに早く打っている心臓の鼓動を感じながら、チヨは現実に起きたことではないことを、頭がゆっくりと理解し、胸を撫で下ろした。こんなお婆ちゃんになっても恐ろしい夢を見るのか、と

      • NYリレー小説プロジェクト 

        第一話から読む マイキーとイーストヴィレッジの住人たち 第3話(リレー小説・無料編) 第三走者: 萩原久代 
「そろそろデザートにしましょう。マイキー、あなたも食べる?」 
チヨはマイキーの大好物のチーズケーキをスプーンですくってテーブルに置いた。
「チチッ、チー!」
マイキーはまるで”うわー、嬉しーい”とでも言っているようだった。 チヨはその昔、二人の子供が小さい時にしていたようにマイキーに話しかけた。話はチヨから一方的であったが、マイキーのうなずくような仕草が愛ら

        • NYリレー小説プロジェクト 

          第1話から読む マイキーとイーストヴィレッジの住人たち 第2話(リレー小説・無料編) 第二走者: らうす・こんぶ 「また来やがったな、忌々しいネズミめ!」 ジョセフィーヌはものすごい形相でマイキーを睨みつけると、不自由な右足を引きずりながら大急ぎで駆け寄り(本人は大急ぎで駆け寄ったつもりだが、足が悪いので傍目にはのろのろと歩み寄ったようにしか見えない)杖を振り上げた。だが、すばしっこいマイキーは足の悪いジョセフィーヌを小バカにするように、あっという間に壁の穴に逃げ込んで

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        • マイキーとイーストヴィレッジの住人たち(リレー小説・無料編)
          4本

        記事

          NYリレー小説プロジェクト 

          マイキーとイーストヴィレッジの住人たち 第1話(リレー小説・無料編) 第一走者: 福島 千里 マンハッタン区イーストビレッジ。都市開発の風が吹き荒れるニューヨークだが、この界隈には今なお古き良き時代のニューヨークの面影が残っている。その一角、5階建ての古いアパートの2階にチヨは暮らしていた。 建物は築100年以上とかなり古く、エレベーターはない。しかし、その古めかしい赤煉瓦の外装とはうってかわって内装はきれいに改装されている。白を基調とした2ベッドルームのモダンな佇まい

          NYリレー小説プロジェクト 

          10/24から開始!NYリレー小説プロジェクト

          今回のお知らせ:リレー小説開始について 2021年7月に気の合う5人のライターたちによって始まった共同つれづれ日記「ニューヨーク、ときどきDIARY」。はやいもので、今年7月で開始から満3年を迎えることができました。 パンデミックでは大打撃を受けたニューヨークは、現在では世界各国からの旅行者で溢れる賑やかな街へと、かつての姿をすっかり取り戻しています。世の中が常に変わり続けるように、書き手である5人にも様々な変化が訪れています。この日記活動からちょっと足が遠のいた人、そう

          10/24から開始!NYリレー小説プロジェクト

          静寂の朝

          by 福島 千里 世界中から多くの観光客が集まるニューヨーク。中心地となるマンハッタンには、市民のオアシス、セントラルパークがあります。 その一角に、シープメドウという名のピクニックエリアがあります(かつてこの地で羊が放牧されていたことからその名がつけられたそうな)。面積にして約6万平方メートル。見事な芝生と眼前に広がる摩天楼のコントラスト、何より都市の真ん中にいるとは思えない開放感は格別で、地元民のみならず、多くの旅行者で賑わうニューヨークの人気スポットの1つです。

          いつものバスの車窓から

          by 福島 千里 今年のニューヨークの夏はやたらと暑かった(と、思う)。 湿度も例年より高く、空気もなんだか重苦しい。 (「東京の夏に比べたらはるかにマシですよ」  日本からいらした方々はそうおっしゃるのですが、  元来暑さに弱い私的には、不快度数は日々MAX) 夏季は仕事が忙しくなるので、 休みらしい休みはほぼとらない。 今年の夏も、例年どおり仕事の日々。 朝起きて、仕事現場があるマンハッタン行きのバスに乗る。 私が座るのは、決まって進行方向左側、窓側の席。 連日の湿

          いつものバスの車窓から

          夏季限定の屋上バー

          今回のテーマ: 夏の1コマ by  萩原久代 ニューヨークのダウンタウンにアートギャラリーが戻ってきた。ソーホー地区とチャイナタウンの境界線のあたりとトライベッカ地区がホットだ。コロナで空き店舗になって、まだ借り手のなかなかつかない広いスペースがアートギャラリーに変身している。 ギャラリーがやってくると、お洒落なバーやレストランもやってくる。ほとんどチャイナタウンではないかと思われる地域にもブティックホテルがオープンしている。 そんなブティックホテルの屋上に、夏季限定

          スカッとする、スイカガスパチョ

          今回のテーマ: #このレシピが好き by  萩原久代 ニューヨークも30度を超える暑い日が続いてます。この時期は、全く台所に立つ気がしません。オーブンやガスコンロを見るだけで汗がでてきます。 暑い日はガスパチョを作ることがあります。トマトを主力に、いくつか野菜を加えて味の変化を楽しみます。今回はトマトは脇役で、スイカが主役のガスパチョを作ってみました。このレシピの基本は、ニューヨークタイムズ紙のお料理コラムで見つけたものです。(同紙レシピにはニンニクとバジルは含まれていま

          スカッとする、スイカガスパチョ

          ニューヨークのイエローキャブもアプリ使えっていうの?

          今回のテーマ: ウーバー by  萩原久代 ニューヨーク市ではひと昔前だとタクシー(イエローキャブ Yellow taxi cabs)とハイヤーやリムジン(For-Hire vehicles)くらいしかなかった。アプリでライドシェアが急速に拡大したのは2015年以後のことだ。ライドシェア会社は、ride-share companyとか、ride-hailing companyと言われる。アメリカの最大手はウーバー(Uber)とリフト(Lyft)だ。こうした新興ライドシェアは

          ニューヨークのイエローキャブもアプリ使えっていうの?

          アプリ時代の幕開け

          今回のテーマ:ウーバー by らうす・こんぶ ウーバーなるものを初めて知ったのは10年くらい前。IT関連の仕事をしている私の生徒さんが日本語のレッスンの時に、「こんな便利なサービスがあるんですよ」と興奮気味に教えてくれたのがウーバーを知った最初だった。アプリを私に見せながら、「ああやって、こうやって。ほらほらこんなに簡単に車を呼べるんですよ」と説明してくれたが、タクシーなどという高額交通手段をまず使わない私はそもそも配車サービスのようなものには関心がなかった。 ニューヨー

          ニューヨークで引越し

          今回のテーマ: 引越し by 萩原久代 東京で生まれ育って、大学、就職とそのまま東京にいた。長いこと実家のお世話になってしまって、日本の中で引っ越したことが一度もない。高校時代からの友人も、私とほぼ同じで、引越しの経験者は少なかった。 そんなわけで私は引越しに慣れていない。アメリカ留学と海外勤務を経験して大陸間移動には慣れていたが、荷物は自分の身の回りのものだけの5〜10箱程度の運送手配だけで済んだ。大きな引越しではなかった。本格的な引越しの経験はニューヨーク、しかもマ

          気がついたらここにいた(私の引っ越し履歴)

          今回のテーマ:引越し by らうす・こんぶ 人は一生のうちに何度引越しをするのだろう。生まれた土地、生まれた家から一度も引っ越すことのない人もいるが、就職や結婚、家族が増えたり子供の巣立ちなどのタイミングで引越しをする人は多い。これまでは考えたこともなかったけれど、日本人は生きている間に何度くらい引越しを経験するものだろう。 今数えてみたら、私はこれまでに18回引越している。高校を出て上京したのが1回目で、10回目の引越し先がニューヨーク。そして18回目の引越しで東京に戻

          気がついたらここにいた(私の引っ越し履歴)

          募金活動の経験はあるものの

          今回のテーマ: 寄付 by  萩原久代 「私は、名誉にかけて神と国とに対するつとめを行い、いつも他の人々を助け、ガールスカウトのおきてを守るようにいたします」 私は小学校高学年から数年間だけガールスカウトだった。当時のガールスカウトの「約束」は深く記憶に刻まれている。(現在の約束文は当時と少し違う) 土曜日午後に近くの教会敷地内で活動があった。フォークダンスなどの娯楽のほかには、キャンプのためのテント張りやカマド作りの練習や、手旗信号の学習など、今思うとサバイバル研修み

          募金活動の経験はあるものの

          寄付のジレンマ

          今回のテーマ:寄付 by らうす・こんぶ "Live from hand to mouth"は、手にしたものをすぐに口に運ぶ、ということからその日暮らしという意味だが、最近聞いた英語の表現に、"Live from payroll to payroll"というのがあった。 Payrollは給与明細書のこと。アメリカでは隔週で給与が支払われることが多いから、from payroll to payrollは2週間ということになる。最近はインフレで生活が大変なので、多くのアメリカ