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NYリレー小説プロジェクト

マイキーとイーストヴィレッジの住人たち 第9話(リレー小説・有料編)第九走者: 阿部良光

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ホセはチヨのことも割り切れないでいたが、今日のジョセフィーヌの顔色が冴えないことも気になった。元々丈夫で、風邪など引いたこともないと常々豪語していたし、悪態にも勢いが感じられない。何かいつもの彼女と違う感じがした。ジョセフィーヌはジョセフィーヌで、ホセの思い悩んだような顔が気になった。悪巧みを見ぬかれている気がした。尋問されたように思えて、苛立った気分が影響したのか、少し動悸がする。そんな気持ちを探られたくないから、思いっきりドアを閉めてやった。

しかし不安がいや増してきた。さて、どうしよう。これが近々予定されているコープ運営委員会の議題にでもされたら、誰もチヨの独り言を聞いていないと言ってるようだし、自分だけがそうだと言っても同意されないどころか、認知症の初期と言われる妄想症と疑われるのがオチだ。ましてチヨは住人皆から好かれているし、同情票は完全に彼女にいくはずだ。勝ち目はないとの気持ちが強くなってきた。

数年前、住人の一人が親の介護でアパートを空けてしまうため、『5年以上住んだ人は1年以上の賃貸契約で他人に貸すことが出来る』という契約ポリシーを利用して、若い青年にサブリース。その青年は輝かしいレジュメを提出、全ての条件をクリアーして入居したものの、パーティー狂いが災いして出て行く羽目になった。

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