パリで楽しむ「アッピーアワー」
今回のテーマ:ハッピーアワー
by 萩原久代
ニューヨークでバーやレストランに午後7時前に着くと、「ハッピーアワーに間に合った!」とちょっと得した気分になる。東京でも同じような経験がある。お店によってこの制度はないことも多いし、あっても内容が異なる。が、普通は午後5時くらいから午後7〜8時くらいの時間帯をハッピーアワーと呼んで、ビールなどが割引になる。
今、私はパリに滞在しているが、こちらにもあるから嬉しい。フランス語はHを発音しないから、Happy Hourはアッピーアワーとなる。英語でそのままHappy Hourと入口の看板やメニューに書かれているのを見つけると、「アッピー」な気分になる。
ただ、看板が控えめで隠れていたりして見つけにくい。それに、対象となる飲み物は数種類程度に限られる。一部のビールとカクテルの提供が普通のようだ。私はウエイターに確認して注文している。
終日ノンストップ営業をしているカフェ(Cafe)、バー(Bar)、ブラッセリー(Brasserie)やカフェ・バー(Cafe Bar)の一部で導入していて、旅行者の多い地域の店でよく見かける。通常のレストランやビストロにアッピーアワーはない。ランチ後の午後3時頃に一時閉店して、午後7時過ぎにディナーでまた開店するから客呼び寄せの割引制度はないようだ。
アッピーアワーの時間帯はお店によってかなり違いがある。ニューヨークに比べると長時間だと思う。午後5時〜8時か9時くらいが主流だ。最近通りかかったカフェ(下の写真)では午後3時半から10時半と長時間の提供だった。
また、冒頭の写真のカフェ・バーでは、午後7時から午前2時までとすごく長い。アルコールが商売の主力のようだ。毎晩のように多くの老若男女が道路にまではみ出して、飲み物を片手に立っておしゃべりしている。フランス人は本当におしゃべり好きで、ニューヨーカー以上である。ただし、声のボリュームは低めだ。どこでも大声で話をするアメリカ人とは対照的だ。
パリのアッピーアワーが長いのは、夕食が午後9時頃に開始という習慣があり、午後7時〜9時頃はアペロ(食前酒)を楽しむ時間帯だからだろう。どこのカフェもアペロの時間帯はとても賑やかだ。アペロで友人らとおしゃべりした後、うちに帰る人もいるだろうが、アペロ後にそのまま夕食へレストランに流れる人たちもいる。
夏時間で日が長くなると5月中旬でも日没は9時半過ぎだ。アペロの時間はまだ明るい。サンサンと陽の当たるカフェのテラスでアペロを楽しむのに最適である。
さて、ちょっと気になるアッピーアワーの割引額、どんな感じかというと。。。一般的に正規の値段より1〜3ユーロ程度安い。パリもこの数年、物価値上がりしているから、アッピーアワーはお財布に優しい時間帯だ。店の場所とアルコール銘柄で値段は異なるが、例えば、ビール一杯(50cl)の正規料金はだいたい7〜12ユーロくらいのところ、アッピーアワーだと5〜8ユーロくらい。場所によっては4ユーロ程度で飲める店も見かけた。
フランスだからワインはもっと割引になるかな、と思ったが、ワインは対象外らしい。アッピーアワーは食前酒が対象で、カクテル系とビールが主流だ。ワインは夕食と共にいただくもの、というのがフランス流のようだ。
余談だが、フランスのカフェ・バーなどで安く飲める方法がもう一つにある。席に座らず、バー・カウンターで注文して立ち飲みすると、正規料金より1〜2ユーロほど安くなるのだ。コーヒーやソフトドリンクからカクテル、ビール、ワインまで、店で提供する飲み物ほぼ全てが対象だ。フランスだけでなく、イタリアでもバー立ち飲み割引料金制度があった。テラス席に座り込んで2時間居座る人と、バーで15分だけの人には違う価格が設定されている。まあ、バーで1時間以上も喋り込んでいるおっさんたちはいるのだが。
あ、そろそろアッピーアワーの時間になりました! 行ってきまーす。
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萩原久代
ニューヨーク市で1990年から2年間大学院に通い、1995年からマンハッタンに住む。長いサラリーマン生活を経て、調査や翻訳分野の仕事を中心にのんびりと自由業を続けている。2010年からニューヨークを本拠にしながらも、冬は暖かい香港、夏は涼しい欧州で過ごす渡り鳥の生活をしている。