NYリレー小説プロジェクト
マイキーとイーストヴィレッジの住人たち
5人の走者によるリレー小説もついに最終話を迎えることになりました。最終話、物語の結末は各走者による個別の物語となります。マンハッタンのアパートに暮らすチヨと、アパートを根城とする小ネズミ・マイキーを中心に繰り広げられる群像劇。各走者の思い描く結末は、以下のリンク先から有料(一部無料)にてお読みいただけます。
福島 千里 編
らうす こんぶ 編
萩原 久代 編
河野 洋 編
阿部 良光 編
最終話(リレー小説・有料編): 阿部良光 編
チヨはパーティー当日、とても良い気分で目が覚めた。ほとんどの用意はリサの手伝いもあってできているし、皆に会えるとあって、久々に浮き浮きする気分で朝食を準備した。コーヒーにブルガリアン・ヨーグルト+少しのメープルシロップ、未だに硬めのベーグルが好きでカリカリに焼いてクリームチーズを塗る。そして季節の果物。今朝はりんご二片のメニュー。少し高価だが、このところ外れのないシュガー・ビーという品種がお気に入り。
窓の外の街路樹を眺めながら、普通の食事でさえできないでいる人へ思いを馳せる一方、日々の細事はあっても、自分の年齢を考えると、こうして椅子に座って食事ができることの幸せを、神に仏に感謝するのがこの頃の習わしになった。
それは過日、TVニュースで見たイスラエル軍のガザへの侵攻によって、負傷した子供たちが背負われて運ばれる映像が、脳裏に焼き付いていることからの反動でもあろう。ウクライナにしても同様、ロシア侵攻からもう3年が経過して、益々泥沼化している。引くに引けない意地の張り合いの様相さえ呈している。年寄りのチヨにはそれぞれ国の事情もあるが、あたら命をいとも容易く奪い合うことが、何の利益になるのだろうとしか考えられない。
こんなことを思いながらも、ジョセフィーヌの参加意思に、驚きと嬉しさを隠しきれないでいた。もしかしたら参加してくれないかとの諦めの境地だったチヨにとって、それは何にも勝るギフトと思えた。大袈裟ながら、世の平和は近隣同士の付き合いの上に成り立っている、との持論を持ちつつも、ジョセフーヌとの関係は、全くその思いに沿っていなかったと頭を掠める。
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