お土産パッション
テーマ:日本にあってアメリカにないもの
by 福島 千里
日本人はよくお土産を買う。
旅の記念に、自身のために・・・のみならず、家族や友人に、はては会社の上司や同僚のために。お土産は日本、アジア各国の大きな文化だと思う。一方、アメリカに暮らしていると、この国のお土産文化が希薄であることに気がつく。アメリカ人も、旅先でちょっとしたものを家族や恋人のために買うことはある。けれども、その親族や勤め先の同僚の分まで、というのはあまり聞いたことがない。
日本のような高度な土産需要がないせいか、アメリカの土産物屋は大体どこもイマイチだ(あくまで主観)。空港や鉄道駅に行っても、店はどこも似たり寄ったりで、本当に土産を売る気あるんかい!とつっ込みたくなるぐらい、品揃えはおおむねしょぼい。物が豊かな大都市NYですら、街中の土産物屋にあるのはありきたりの巨大マグカップだったり、センスイマイチの小物だったり(しかし値段は一丁前)。ちょっといいものを買おうとすると、今度は値が張ってちょっとしたものがちょっとした値段では買えなくなってしまう。
「もらった方が気後れしない程度の」「気の利いた、ちょっとしたもので」「お値段もリーズナブル」、できれば「バラマキにも使えるような」といった、日本人のお土産市場で求められる、ちょうど良い土産がここにはあまりないのだ(ただし、ハワイは例外だ。ワイキキあたりにはお土産屋さんも豊富だし、日本人が好むバラマキ用のお土産も充実している印象だ。が、あれは日本人をはじめ、アジア人のお土産文化を意識したものなのかな、とも思う)。
だから、NYにやってくる客人らが口を揃えて「ニューヨークにしかなくて、それでいて手ごろなお土産は?」と尋ねてくると、いつも頭を悩ませてしまう。有名店や人気店はいくらでも列挙できるけど、そこでの品々が日本人が求めるお土産に向いているかとなると話は別なのだ。
そもそも日本のお土産事情が高度なのだ。地方の「道の駅」や空港、鉄道駅のギフトショップには、その土地の魅力を凝縮したご当地品が常時ラインナップ。種類が豊富な上に、値段も手頃。その上、質も良い。土産物はどれも適度なサイズ・重量で、旅人の手を煩わせないよう配慮も伺える、。時に包装も美しく、もらった方がワクワクするような仕掛けもポイントが高い。
「楽しかった旅の思い出に、ぜひ当地の魅力を持ち帰って広めてくださいね」
日本の土産物からはそんな気遣いすら感じられる。もしくは、旅の土産話と一緒にいただいた小さな菓子を通じてその情景に思いを馳せ、いつか自分も行ってみたいなどと思ってしまうこともある。これはひとえに日本の熟成したお土産文化を築き上げた買い手の消費欲と、そのニーズに応えようと真摯に取り組んできた作り手・売り手の努力の賜物だと思う。
アメリカに土産文化がないわけではない。パーティに招かれればワインやフルーツなどのちょっとした手土産を携えていったりもするし、旅先で家族のためにちょっとしたものを買うこともある。各都市の空港にはその土地の名入りのチョコがあったり、それなりの銘菓や特産品が並んでいたりする。でも、何かが違うのだ。本来、私は旅行先でのお土産探しが大好きだ。けれども、アメリカ国内旅行となると、日本の旅先でしばしば陥る「これ買って帰らなきゃ!」という使命感が、なかなか湧いてこないのだ。
今年9月、7波の合間を縫って3年ぶりに日本に一時帰国した。滞在を終え、羽田空港から飛び立つ際、NY便のゲート近くにあったギフトショップは、搭乗前に土産を買い求める人々で大変賑わっていた。バスケットの中に次々と放り込まれていく菓子折り箱の数々。まぁ、円安の追い風も大きいのだろうが、お土産を嬉々として爆買いしていく外国人の姿は、アメリカの空港ではまず目にしない光景だ。
日本のお土産に対する情熱と意気込みは本当に興味深い。時を重ねてモノがより良いものになっていくのも、消費者の期待感を裏切らない。次の日本帰国時には何のお土産を買おうか。楽しみで仕方ない。
<おまけ>
アメリカの国内旅行で、お土産探しでテンションが爆上がりになった個人的お気に入りスポット(エリア)をちょっとだけ
①南西部(アリゾナ、ユタ、ネバダ、ニューメキシコ州など)
先住民族の居留地がある地域では、彼らの工芸品を販売するトレーディングポストが点在している。ちょっとした小物から、本宅的なアート作品まで、部族ごとの特色溢れた品々に出会うことができる。
②PDX
オレゴン州ポートランド国際空港の空港コードである。アメリカ国内の空港はどこも物価高で有名だが(飲料水が4~5ドルとか、ビール一杯20ドルとか)、PDX内の物価は空港外とほぼ同じ。加えて消費税0。空港内の土産物屋さんは、大きいとは言えないものの、ローカル色を大切にした商品展開で、見るのも買うのも楽しかった思い出が(5年ほど前の話)。
③ハワイ
ハワイはコーヒーの産地としても有名だが、同じアメリカでも本土からコーヒーを買うととても高額。ハワイの各離島にある小さなローカルの土産物屋さんでは、ネットでも見たことのない、その土地の豆をお手頃な価格で買い求めることができた。また離島をめぐる機会があれば、また美味しいコーヒーをお土産に買って帰りたい。
◆◆福島千里(ふくしま・ちさと)◆◆
1998年渡米。ライター&フォトグラファー。ニューヨーク州立大学写真科卒業後、「地球の歩き方ニューヨーク」など、ガイドブック各種で活動中。10年間のニューヨーク生活の後、都市とのほどよい距離感を求め燐州ニュージャージーへ。趣味は旅と料理と食べ歩き。園芸好きの夫と猫2匹暮らし
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