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みずみずしく

今回のテーマ:水
by 河野 洋

僕は水を必要とする人だ。だから水のように生きたい。川の流れのように止まることなく、いつまでもどこまでも旅をする人。子供の頃は湧き水くらいだったと思うが、成長しているか定かではないが年齢を重ねるごとに、それが小川となり、大河となりつつある、と勝手に想像している。
 


僕の名前は河野洋。3つある漢字のうち2つに「さんずい(水)」が含まれている。「河」と「洋」。下の名前は水の羊で「ひろし」と読む。文字通り、3月生まれの羊座に生まれた。性格は羊のように、おっとりしていて争いを好まない。横入りされても笑顔で譲ってしまう性格だ。気が小さいのではなく、些細なことでは腹が立たないのだ。自分でいうのは、おこがましいが、両親が名付けてくれた名前の通り、心が広い(ひろし)のかもしれない。
 
母が洋と名づけた理由は、海のように心が大きく、海を越えて行ける大きな人間になって欲しいからだった。そして実際に僕は日本を飛び出してアメリカに移住してしまった。ある時、母は洋などという名前をつければ良かったと言ったことがある。息子と離れ離れになってしまったのは名前が原因だと思ったりしたのだろう。自分も親になって感じるが、やっぱり自分の子供に会えないと寂しいと感じる。だからだろうか、母は何度もニューヨークに遊びに来た。10回以上はきていると思う。父が一回しか来なかったことを考えると、その数は凄い。
 
そんな母は間も無く86歳になる。認知症になってしまったが、未だ僕の顔を見れば「ひろちゃん」と言って歓迎してくれるし、電話をすれば「ひろちゃん」と元気な声を聞かせてくれる。
 
話が「水」から逸れてしまったが、自分は水と密接な関係があることを書きたかったのだった。もう一つ付け足すと僕は魚座だ。やっぱり水がないと生きられない類の人なのか。
 
一昔前、半地下のアパートに住んでいた時に、階上の洗濯機が故障したかで、天井から水漏れし、その下にあったパソコンやプリンター、CDなどが水浸しにダメになったことがある。でも、それが、水を恨んだ唯一の瞬間だったと思う。
 
その後、水害に遭うことはなくなった。涙もろくなったものの、ここ数年は晴れ男が定着してきた。カフェに入ると雨が降り、カフェを出る頃には雨が止む。旅行をしていても車に乗っている時だけ雨が降り、それ以外は傘もいらない。
 
実際には水がないと地球は干からびてしまい、生物は生存できない。人間の体もほとんどは水分でできている。だから、僕たちは水を大切にして、水に感謝し、水分をしっかり摂る。そう、いつまでも瑞々しくあるために。
 
2023年8月22日
文:河野洋

[プロフィール]
名古屋市出身、'92年にNYへ移住、'03年「Mar Creation」設立、'12年「New York Japan CineFest」'21年に「Chicago Japan Film Collective」という日本映画祭を立ち上げ、数々の音楽アーティストのライブ、日本文化イベントを手がけ、米国日系新聞などでエッセー、コラム、音楽、映画記事を執筆。21年はアートコラボで詩も手がけ、現在は映画プロデューサーとしても活動中。

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