30:赤宝玉
赤い赤い炎晶玉。
それが映し出すものは― 何なのでしょう?
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「どういうこと?」
呆然とたたずむそこは、確かに私の里だった。
今あるのは、すすに塗れた残骸と乾いた風。
1年の放浪の旅から帰った私を迎える者は、一人もいなかった。
何が起こったのか判らぬまま、私は里中を歩き回った。
その中で一つ、無傷だったのが社。
大切な物が祭ってあるとかで、一度も中を見たことはない。
十年に一度の儀式の時のみ開かれはするが、中に入れるのは一部の人。
どうして、無傷でいられたのだろう。
社の扉に手をかけようとした時。
「ほう、まだ生き残りがいたのか」
その声に私は振り向く。
!!
人ならざるその姿に私は言葉を失った。
黒い肢体に目だけがギラギラと光っている。
鋭い爪が私の喉を目掛けていると悟った時でさえ動けなかった。
パアン
社の扉が開いたかと思うと私の両側を赤い何かが走った。
それはまっすぐに化け物に飛び掛った。
赤い赤い……炎。
何が起こったのか理解できずに、私はその場にへたり込んでいた。
赤々と化け物が浄化されるまで―
「おい。何時までへばってるんだ?」
不意の声に私は恐る恐る振り返った。
が、何処にも誰もいない。
あるのは社の中に祭られている、赤い宝玉のついた杖1本。
「ここだ。ここ。助けてやったのに礼の一つもなしか?主」
よーく見ると宝玉の中に小さな人がいた。
「ありがとう。……って主って何よ」
「炎の民はお前一人だろう。だったら、俺を使えるのはお前しかいない。
それに、俺を起こしてくれるのは主だ」
よくわからない理屈に頭を捻る。
「あのさ、どーして里がこうなってる訳?」
「俺様目当てだろう。奴らにとっちゃ厄介な力らしいからな」
「ってあんたといたら、さっきみたいな目に会うって事?お断りよ!!」
私はぱんぱんと膝を払って立ち上がる。
「そーいうな。どうせ一人でいても、
主はお前しかいない時点で狙われる」
「……」
何でこんな事になってるんだろう。
帰ってみれば里はなくて、厄介な面倒ごとに巻き込まれて―
「俺をとれ。守ってやれるぞ」
「……あーもう、判ったわよ」
半分、やけになって杖を手にとる。
それはしっくりと手にあった。
「よろしく、主」
そして、その夜。里の人達の送り火を焚いた。
闇夜に舞う火の粉は、とても綺麗で。綺麗で……
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