2024/10/16 「世界食糧デー」

海が赤く染まる。
昔は山で土砂崩れが起きた時などがそうなったらしいけれど、最近では毎年のように赤茶色に染まりぷくぷくとした泡が立つ。

「あかんねぇ」

ばーさまがそう呟いた。普段は山の方で畑を耕しているばーさまは海の赤い水を掬うとぺしゃりとそれを叩きつけた。

「あかんねぇ」
もう一度、同じ言葉が繰り返される。

「山のがここまできとる」
ぽつりぽつりと吐き出される言葉を拾うと、田畑で使う肥料が水に混ざり海まで流れて過剰供給された栄養にプランクトンが群がっているということらしい。

「これが、えがったがかわからんねぇ」

一瞬掴み損ねそうになった意味を脳内で拾い集める。
「たくさん食料が取れるようになって、よかったでしょう?」
「わかんねぇ」
どうやら、化学肥料の使用が良かったことなのかわからないという事だった。他の生き物を犠牲にして、人だけが生き延びる。その姿の結果が、この『赤い海』なのだとばーさまは嘆いている。

人の成すことがよかったかどうか、判断が下るのは百年後だ。そして、百年後には取り返しがつかなくなっている。これも、その一つになりそうだ。

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