星達の集う時間6
≪《【運命・縁】 ~全てはすでに縁という意図~1》≫
呼び出しをくらって、ろくな目にあったことは無い。
コンコン。
「失礼します」
と言って入った先に見たのは、キスシーン。
「失礼しました」
何事もなかったかのように、その部屋を後にしようとした。
「あら、待ってよ。もう終わったから良いのよ」
「そうですか」
「じゃあ、そう言うことで」
リースは航に手を振り、追い払う。
「で、どう言った用件ですか?」
航が出ていった後に僕は聞く。
「……。もう、いいわ」
まじめな顔でリースが腕を組む。
「何が、です?」
「先生、なんてやっていたくないでしょう?
代わりが見つかったから、もういいって言ってるの。
もともと、やる気はなかったんだし問題ないでしょう?」
「それは……」
航が何を言ったのかは知らない。が、気にはなった。
リースの言う代わりも。
「そんなに長い間でもないでしょうから、別に僕は構いませんよ」
「そう?はい。と言うかと思ったのに」
リースは小首を傾げた。
「代わりというのは、誰なんです?」
握りしめた手が小刻みに震えている。
「?航だけど……。珍しいわね。余計なことを聞くなんて」
「いいえ。ただ、気になっただけで……」
喉がからからに乾いている。
「じゃ、続ける。でいいのね?」
「はい」
何も気づかれないように、礼をして部屋を後にした。
貴夜は度々相談室に来てはいろいろな話をした。
その度に僕は苛立ちを隠しながら、話し相手になる。
「先生、知ってます?」
「何を?」
「星が年々減っているって。300年ほど前から増えてないって話」
「そう」
「でね。最近では、一番輝いていた天上星も消えてしまったらしいですよ」
僕は適当な返事をしながら採点をしていた。
「確か、2週間ほど前だったかな」
その話を聞いて僕の手はぴたりと止まった。
2週間前、僕が天上星を黒く塗りつぶした日。
『定め』が確実に近づいてくる足音を聞いた気がした。
自分の部屋に戻って、何をするでもなくベットに突っ伏した。
「『定め』は変わらない」
不意に声が響いてきた。
「死神……」
そこにいたのは黒衣を纏った少女。
「星の欠片を握りし者。星の行く先を『定め』なければならない」
心臓の鼓動が大きく響いた気がした。
「まだ、『定めの時』じゃない」
少女は黒衣のフードを取り払う。
「でしょうね」
そこにあったのはいつものあどけない少女の顔。
「何の冗談ですか?」
「冗談なんかじゃないわよ。
亀裂が抑えきれなくなってきてるのは事実よ」
「もう少し、持ちこたえてくれませんか? まだ、やるべき事があるんです」
少女はため息をつく。
「判ってるわよ。出あった時に決めてたじゃない。
『定め』が決まるまで」
トクンと小さな鼓動が響く。
瞬間―遠い記憶が鮮やかに蘇った。
「ここからの眺めは綺麗ですね」
不意にかけられた言葉。
見るともなしに見ていた摩天楼。
「そうかな」
チラリと後ろを振り返り、すぐ青い空を見上げる。
僕にとってはただの景色にしか見えない。
学校の最上階、そこからは連なるビル群が目に入る。
「……」
「ここから見える星は全て偽りだよ。星があったのは大昔」
「見せてあげましょうか?大昔の星を」
僕は驚いて、黒衣の者へと振り向いた。
「本当に?」
「ええ、でも今じゃありません。
あなたが、星の行く先を決める時」
「星の行く先?」
一片の風が舞った。
『彼方自身が『定め』を決めた時に―』
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