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第1章 運命の星【先見】 1

「もし、そこのお嬢さん」

 学校の帰り道、私はまっすぐと家へ帰ろうと思っていた。
 その時にふと、男性の声に呼び止められたのだ。
 私はそのまま無視をして通り過ぎようとした。
「そこのあなたですよ。冠瀬かんぜ 貴夜きよさん」

 優しそうな声。
 私の足はそこで止まり振り返った。

「なんで・・・私の名前!?」

 私は怪しみの目でその人を見た。
 と、目の前にいるのは結構好みの男・・・。だよね。
 長髪で後ろに結んである髪は腰にまで届いている。
 瞳はブルーで髪は白に近い、いや、銀色に光ってるようにも見える。
 中性的なその雰囲気は神秘的にも見える。

「すみません。ちょっと、あなたの運勢が気になったもので」
 と、言っている彼の服装は占い師だろうか?
 それっぽい服を着ている。
「私、お金なんて持ってないですよ」

 彼の立ってる後ろには、『星の道標』と書かれた看板が掛かっている扉がある。
「お金なんて取りません。少し、占わせていただけませんか?」
 いかにも申し訳なさそうにそう言うので、私は断ることが出来なかった。

「いいけど・・・」

 本当は、良くなんて無かった。
 なぜなら、このあと家に帰って、
 大量に貯まっている課題を片づけなければいけなかったからだ。

 その扉の向こうは暗く、占いの雰囲気が伝わってくる。
 中に進むといすがあり、その前に黒いテーブルが一つ。
 彼は向こう側に座りながら、私にいすに座るように勧めた。
 机の上にはコインと短剣、小さな杖そして水の入ったカップ。
 どれも、中世のヨーロッパ風の細工がしてある。
 もっとも私には本当にその時代の物かなんてわからなかったが、とにかく古そうだった。
 普通なら、水晶とかありそうな物なのに?

「少しこのコインを見つめてて下さいませんか?」
 彼はそう言ってコインを私の前に差し出す。
「触ってもいいですよ」
 彼はにこやかな笑顔を私に向ける。
「でもこれから何があっても、声だけは出さないでください」
 私が何も答えないまま、彼はそう続けて言っていた。

 触ってもいいって言われても・・・。
 なんだか触る気にはなれない。
 私はじっと黙って、そのコインを見つめていた。
 と、彼は短剣で自分の腕を切りつけた。
 私は息をのんで、その光景を見ていることしかできなかった。
 したたり落ちる紅い血が、水の入ったカップへと落ちてゆく。
 さっき、声だけは出さないでくださいと言ったのはこういうことだったの?

 これが占い?

 痛みを感じないのか彼は黙ったままだ。
 杖でその水をかきまぜ水が紅く染まる。
 そして何事もなかったように、彼は私にさっきと変わらぬ笑顔を見せた。

「もういいですか?」
 そう言って、コインを指さす。

「え、あ。はい・・」
 私は慌てて、コインを手渡す。
 彼はカップの上にそのコインを置き、目を閉じる。
 静寂が支配するその空間で私は声をかけることが出来なかった。
 しばらくして、彼は目を開きカップの上のコインを机に置いた。
 水は元通り透明に透き通っている。

「闇に・・・」
 彼は言葉を切った。
 言ってよいのかと迷ったような顔をしている。
「あの・・・?占ってくれたんじゃないんですか?」
「あ、ええ。・・・」
 言いにくそうに彼はゆっくりと息を吐き、不思議な言葉を私に継げた。

「これから、あなたは7つの星に支配されるでしょう。

 風はあなたを誘い、炎はあなたを留め、水はあなたを癒し、

 地はあなたを包み、光はあなたを弄び、闇はあなたを操る」

 ???
「あの・・・。よくわからないんですけど」
 と言うか全然わからない・・・。
「わかりやすく言うとね。誘惑には気をつけなさいって事」
 彼はにっこりと、子供にでも言うかのように私に伝える。
「さっきの言葉と全然違うんじゃないですか?」
「簡単に言っただけだよ。それより、占いはこれでおしまい。時間をとらせて悪かったね」
 彼は立ち上がり、私を扉へと案内する。
「いいえ。別に、そんな事はありませんから」
「課題がまだたくさんあるんだろう?これはちょっとしたお礼」
 と、なにやらノートぐらいの大きさの封筒を私に手渡す。
「ありがとうございます」
 反射的にお礼の言葉を言ってしまった。
 え・・・。私、この人に課題のこと言ったっけ?

「それじゃ、・・・・・・・。気をつけて」

 なんだったんだろう。あれは?
 誘惑なんてそこら辺にごろごろしてる。
 いちいち気をつけてたらきりがないだろうし。
 それより課題・・・。
 って、そう言えばこの封筒何??
 私は手に持っていた封筒を開いてみる。
 これ・・・。今日の課題の解答のような気がする。
 なんで、あの人がこんな物持ってるの???
 ま、いっか。写しちゃえ。

 これが全ての始まりだと言うことに、私はまだ気がついていなかった。






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