2024/05/18 「ことばの日」
「なる、どういう意味?」
同居人の質問に意味が掴めず、どんな字?と私は聞き返した。
『成る』
見せられた画面のはそう出ている。
「出来上がる。完成する……かな」
「木の実が出来上がる?」
私は首を傾げる。木の実の場合はそんな字だったろうか。調べると『生る』が出てくる。
「その場合はこっち」と画面を見せる。
「同じ音なのに、意味が違うのは難しいよね。でも、この国は文字も違う」
「その場合は、ひらがなにしてしまうのがいい。漢字を平仮名にするのは『ひらく』っていうらしいよ」
同居人は目を白黒させる。表意文字ではなく、表音文字しかつかってないと、『文字に意味があるけど、使う度に音が違う文字』は意味がわからないのだろう。向こうの文字には『ひらく』というものがない。文字は音を表すのだから。
「スペルミスではなくて?」
「誤字ね。そういうのは子供のうちに訂正されるかな。大人になって音を間違えるのは少ないけど、カタカナ語は間違えやすいかも」
スペルミス……とは言わないな。カタカナひらがなの間違いより『漢字間違い』の方が多いくらいだ。もしくは、慣用句の誤用だろうか。
「かたかなとひらがなの違いは? そもそもなんでも二つも……漢字も合わせて三つも文字があるなんて、どんな風に覚えてるの。さらにローマ字があるらしいけど……もう、意味が分からない」
辞書を片手に同居人が目を回している。
そうか。外の人がこちらの言葉を学ぶとそうなるんだ。こちらから見ると、一音一語ではないし、綴り方で音が変わる言葉も難易度が高いと思うのだけど。そもそも、文法が大きく違うので単語の置き方もわからない。
そう考えると、同居人の言語習得は改めてすごいなと思う。赤点だった私には簡単な単語が出てくるのがやっとで、文章にはならない。
「難しいよね。私もあなたの言葉は難しい」
異文化接触は簡単ではない。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?