炎の揺らぐ時間
【崩壊】
ジカンノハテハドンナダロウ
ネェ。キエン?ドウオモウ?
世界の崩壊を見ていた。
ただ見ていた。
どうすることも出来ずに
見ている事しか出来ずに
突然の出来事に
あいつが死ぬ様を見ているしか出来なかった―
『あいつが死んだ。
世界は滅ぶ。
そして、私は……』
炎がゆっくりと舞う。
滅ぶしかないのだろうか
滅びたいのだろうか
【運命】
幾重もの命の鎖を見続けてきた。
ずっと、気の遠くなるほど。
延々と続く、岩肌の大地。
ギラギラと輝く太陽。
死に逝く星の末路を見てるようだ。
カラン
散らばる骨の一つが鳴った。
その傍に子供がいた。
餓えで餓鬼のようにやせ細り、今にも死にそうな。
と、突然私を見るなり襲い掛かってきた。
生きる事への執念か、その子は私の腕にかじりついている。
そして、血を啜り、肉を喰らう。
……痛みはない。
「どうして」
右腕一本喰い終わった所でその子は聞いた。
「どうして何も言わない?死ぬのが怖くないのか?」
私はチラリとその子を見た。
「それで満腹か?」
「そんな事聞いてない。このまま喰われれば死ぬだろう。怖くないのか?」
「さぁな」
ぬるりとした感触が体の半分を覆っていた。
「痛くはないのか?」
「もう、感じない。何も」
風が一陣舞い上がる。
「あの地獄を見た瞬間から」
何も―
何も感じない。
「地獄?これよりも酷い?」
「ああ」
閉じた目に映るは
誰もいない沈黙。
変化の戸惑い。
生への絶望。
繰り返し繰り返し。
「だが、これ以上喰われれば無意識に
俺がお前を殺すかもな」
子供は小さく一歩後ずさりする。
そして、そのまま何も言わなくなった。
3日経って腕は元に戻った。
何が気に入ったのか、気がつくと子供は私の傍にいた。
日が昇るとどこかへ行き、沈むと戻ってくるといった具合。
そして、子供は餓鬼のような姿からやせ細った子供になった。
「わ~すごい。これってあんたのせい?
あんたを喰ってからすごく調子がいいんだ」
わくわくとした声で子供が聞いた。
「さぁな」
私にはどんな作用でそうなったのかはわからない。
だが、おそらくあの時喰った血肉が何か影響を与えてる事は確かだった。
そんな日々が続いたある日の事。
「ねぇ。もうそろそろ名前教えてくれてもいいじゃん」
帰ってきた子供が私にすがる。
「忘れたといったろう」
「だって、こっちの名前は教えたろ?サリザって」
「ぁー」
遠くで微かな声がした。
「誰か……子供?………襲われてる!!」
「あ、おい!?」
叫んで飛び出して行ったサリザを慌てて追いかける。
私には遠すぎて見えなかった姿が見えてくる。
子供が大勢の大人のえさになろうとしていた。
そして、サリザを見つけたそいつらはターゲットを変えた。
「サリザ!!」
一人がサリザの喉に喰らいつく瞬間だった。
体が熱く燃え上がったのは。
そして、サリザを囲い込むように炎が上がる。
助けようと?あの子供を?
滅んでも良いのではなかったのか?
こんな世界など
「ねぇ?大丈夫?」
サリザが傍にいた。
それでも、見捨てられはしない―
「ああ、大丈夫だ」
「良かった」
「サリザ?」
すっとサリザは視線をそらす。
「……誰も」
その先には先程の追いかけられていた子が息絶えていた。
「誰も死なない世界が欲しい。皆がまとまれば大きな力になるのに」
「サリザ」
冷たい風がサリザの髪を揺らす。
「力があるんでしょ?さっきのあんたの力でしょ?
あたいを助けてくれる?」
細められた瞳が私のほうを向き、手が差し出される。
「あんたじゃない。鬼炎だ」
差し出された手を握り返す。
「クスッ。鬼炎。あたい、あんたがあたいを殺さないだけで
それだけで安心できた」
そうして賊『ラー』が出来上がる。
【終末】
「『ラー』はあたいたちの太陽だよ」
そう微笑んだサリザの姿が忘れられない。
そして、サリザは死んでいった。
私はただサリザのためだけに生きてきた。
『誰も死なない世界が欲しい』
でも、実際には……
そんな世界ありはしない。
だから、望みは―
「鬼炎。ボクたぶんキヨに会った事あるよ」
「なんだと?どこでだ?」
一人の子供の言葉に私は喜んだ。
「あ、でも、わかんない。本当に鬼炎が探しているキヨなのか。
だって、ボクも記憶があいまいだし、今は移動してるかもしれないし」
びくびくとする子供に苛立ちが募る。
「行って来い。居なかったらそれでいい。居たら、ココへつれて来い」
子供は慌ててかけて行った。
やっと、望みが叶う。
あいつが話していたキヨ。
7つ目の力を持つ娘。
チラリと炎が揺れる。
―すまない。サリザ―約束は守れない。
7つの力があれば、世界は滅ぶ。
その為に何を犠牲にしても構わない。
7つの力があれば―
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