2024/11/07 「ソースの日」
「こっちのソースって甘いよね」
ソースが甘い? そう思って振り返ると同居人の手にはとんかつソースが握られていた。お皿にはコロッケ。油の匂いがすると思ったのはこれだったようだ。
「醤油はしょっぱいよ。あれがソースに入るのかはわかんないけど」
「醤油ソースも甘いよ」
同居人が訂正してくる。そう言えば、うちの醤油は甘めの味のものを使ってたなと思い出した。
あと少しの作業を早く終わらせようと手を動かしながら考える。
「うーん。そうだけど……」
「もう少し、酸味が欲しいよね」
酸味か……と考えるけど、お酢では酸っぱすぎる。
「だから、レモン汁を加えていい?」
同居人がいつの間にかレモンを手にしていた。
「いいよ。任せるから」
残っていた作業を終えて、テーブルにつくと丁度料理が終わったようだった。コロッケとキャベツにインスタントのコーンスープ。あとは、同居人がロールパンで私はご飯をよそう。
「いただきます」
手を合わせてから、コロッケをさっそく食べてみる。レモン汁を混ぜたソース……だと思っていたけれど、一口かじって思ったよりも酸っぱい味に眉をしかめてしまった。
「これ……」
「おいしいでしょ?」
同居人が笑って言う。おいしいとは言えない。酸っぱすぎる。私はソースを追加でかけて、味をごまかす。
「ごめん……私はソースがいい」
「そっか。やっぱり、甘いのが好きなんだ」
「好きっていうより、たぶん、その味に慣れてるだけかも」
「だったら、僕はレモン系の味が良いな。うちはそれだったから」
私たちはお互いに見つめ合ってしまった。
「ソースも別々にする?」「そうだね」
ご飯とパンがそれぞれ別なようにソースも別にすることになってしまった。
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