2024/07/29 線香花火(せんこうはなび)
小さな火が飛び跳ねる様は好きではない。どこに跳ねるか予測がつかない火は恐怖でしかない。
「え。わかるよ」
私の言葉を同居人はさらりと否定して、よくわからない方程式を持ち出して、「だから、わかる」と結論付けた。
「じゃぁ。やって」
線香花火を渡すといいよと笑った。日も落ちたので外に出て花火をする。
パチパチと火が飛び出したと思ったら、あっという間に落ちてしまった。
「揺れたら落ちるよ」
「難しい」
同居人は聞いてないと言いながらも、2本目に火をつける。先ほどよりは長かったかもしれないけれど、これもあっという間に落ちた。
3本目。
あと少しと言うところで、落ちてしまった。
「おしい」
思わず出た声に二人で笑う。
4本目は最後まで燃え尽きた。見てるだけなら、楽しい。
「ほらね、出来た」
同居人が誇らしげにそう言うので、「もう一本も完璧だね」と言って渡した。
5本目……最後まで燃え尽きて、火が落ちた。
サンダルを履いた足の上に。
「あっうちぃい」
叫び声が近所にこだまする。私は準備してあったバケツの水をかける。
「予測できないものでしょ」
よく見ると、焼いたのはサンダル部分で足は無事のようだ。
火はどこに飛ぶのか予測できない。
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