2024/07/18 「光化学スモッグの日」

キラキラキラ
空気がきらめいている。私はそれをきれいだと思って手を伸ばしたけど、光は掴めなかった。

コンッコンッ
さっちゃんが咳をする。
「風邪?」
「たぶん」
マスクの下でもごもごとそう言ってる声がした。

キラキラの空気はそこに留まっている。
よく見ると、マスクをしている人が増えたような気がした。

やがて、私も咳をするようになった。喉がチクチクとする。目も何かが入ったような違和感がある。

「今日は外に出るのはやめなさい」
光がキラキラと落ちてくる日に母はそう言った。
「咳が酷くなるから」
その頃には毎日、酷い咳が出るようになってたのでのどの痛みは常にあった。キラキラの日が特に酷くなる。

「キラキラはだめなの?」
私は母に聞いた。
「キラキラ? あれはね。埃のようなものよ。道の先が見えなくなってるでしょ。あれが体に入って悪さをするから、咳が出るのよ」

そう言われて初めて、キラキラがばい菌に見えた。

キラキラ コンコンッ

もう、マスクをしていない人はいない。道の先が白くなって見えない。後ろを振り返っても、歩いてきた道が途中で白く消えている。
白だと思っているけど、黄色っぽい感じもする。どれが本当なのかわからない。

「今日の コン テストは コン」
先生の声もマスクと咳で聞き取りづらい。
「今日ね コン 道で コン」
友人の声もマスクと咳の向こう側だ。

やがて、聞き返すことも面倒になってしまった。話す方も喉が辛いのか文字で書いて知らせるようになった。

誰かがキラキラの害を訴えている声が路上でした。誰もそれを振り返らずに歩いていく。聞こえていないのかもしれない。

キラキラ コンコン

今日も世界はキラキラしている。

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