2024/10/21 「あかりの日」

明りが灯った。
思わずハイタッチで喜んでしまう。このために、二人ほど死んでしまったけど、彼らのおかげでこの村に明りが届いた。

かがり火のような揺れがない。

「精霊様が宿ったの?」
子供たちがそう言って笑った。大人が「そうよ」と答える。仕組みは私たちにもわからない。ただ、明るくて目が壊れそうだということだけはわかった。


「面白いね。君たちはそうやって使うんだ」

異国の人間が村に来てそう言って笑った。昼の間に『デンチ』に明りを貯めて、夜に灯す。
真っ白な大広間に村のみんなが集まって、思い思いに過ごす。眠くなれば自分の家に帰る。その様子を異国の人間が感心したように眺めた。

「本を読むことはないの?」
もう一人の異国の人間が聞いた。
「本?」
その人間は手を開いて何やら仕草で示した。私は大広間を指さす。
「みんな、好きに過ごす」

ほとんどが団らんをして過ごし、簡単な食事や飲み物を持ち込んでもいる。
布のほつれを直したり、道具の修繕をしているものもいる。
中には遊具を持ち込む子供もいるが、子供たちは眠そうにした時点で家に帰すのが決まりだった。
「ないのね」

私にはその人間の単語が理解できなかった。煙は何かが起きた時にしか上げない、今『読む』必要があるものはなかった。

明りは便利だった。便利だったが、時に火花が散ったり、とげとげになってしまったりと危険だった。

「だから、家に明かりを灯そう」
そう言い出したのは広間で過ごした子どもたちだった。また、何かが変わる予感がした。

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