2024/10/17 「貯蓄の日」
「貯蓄ってある?」
不思議な質問をするなと思いながら、「貯金額は内緒」と返すと不思議な顔をされてしまった。
私は同居人の顔を見てから、手元を見る。
「何を見てるの?」
のぞき込む前に、その画面が目の前に差し出される。そこには米蔵の絵が描かれていた。
「ああ。備蓄…ってこと? 貯蓄って……そっか。昔は食料の貯蓄が当たり前だったか」
一人で頷いていると、同居人が不満そうな目を向けた。
「どういう意味? 貯めておく食料の事でしょ?」
「えっとね。現代だと、貯蓄は……貯めておくお金かなと……たぶん。で、食料は備蓄で何かあった時のために蓄えておくって言う感じで」
説明しながらも、私もよくわからない。一音違うだけでこんなに意味が違ってくるなんて、本当に面倒な言語だ……と、同居人も以前言っていた。同意しかない。
「難しいね」
半分も理解できなかったという顔で同居人はそう言った。
「今はこんな米蔵はないの。あるとすれば倉庫だろうけど、どこにあるかはわからない」
田んぼのある場所に行けばそれらしいものがあるような気はするけど、それが米の保存のためなのか、他の倉庫なのかはよくわからない。
「米蔵消失??」
「消失って言うより、現代的な建物に変わったって言えばいいのか……うーん」
本当にわからない。食料はどこにあるのだろう。スーパーの倉庫に集められてるのだろうか?
「ごめん。降参。わからない」
「そっか。現代ミステリーだね」
同居人が大真面目にそういうので吹き出してしまった。確かにミステリーだ。
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