~氷の涙~贖罪の星【同士】1
「晴れてるな~今日もいい天気になりそう」
何処までも青い空を見上げて私は思ったままを口にする。
窓からは小鳥のさえずりが聞こえてくる。
「・・・。嫌な天気だ」
後ろからボソリっと言った声が聞こえた。
「何か言った?」
私は振り返りシェフィアを睨む。
ベットに腰掛けて彼はこちらをちらりと見る。
「いいや」
彼は視線を合わせないようにすぐ目をそらした。
「いい天気でしょ?」
私はもう一度嫌味っぽく聞く。
「ああ、そうだな。レイにとってはいい天気だよな」
不機嫌そうな顔で返事が返ってきた。
「も~そんな露骨に顔に出さないでよ。どうせ今日も図書館で調べモノでしょ」
「分かってるなら聞くな」
シェフィアはそう言いながら部屋を出てゆく。
「ちょっと待ってよ。私も行くから」
先に歩き出したシェフィアに続き、宿屋を出る。
私たちは『あるモノ』を調べるために図書館へと向かう。
この街の図書館にそれに関するものがあるという情報を得たからだ。
それは古くから伝わる伝説のもの。
あまりにも古くて実在するかどうかも分からない。
それでも、私たちは偶然手に入れた『古文書』によってそれが実在したことを知った。
それを手懸かりに私達は旅をしているんだけど、一つ厄介な点がある。
「ねえ。もうそろそろまずいんじゃない?」
私は小走りにシェフィアに近づき聞いてみる。
「ああ・・・分かってる。明日にでもこの街を引き払うよ」
彼にも分かってるようだ。
1ヶ月近くも同じ街にいるのは危ない。
彼は人間じゃなく吸血鬼だった。
私を愛したために、私を護るために一族から追われている。
その追っ手がもうそろそろ来てもおかしくない。
図書館に着くなり、彼は足も止めずいつもの場所へと行く。
私はというと、近くにあったイスに座り『古文書』の解読を試みる。
古代語で書かれたそれは容易に分かるものじゃない。
だから、なかなか進まないけど・・・
「はあ~やっぱり進まない」
1時間も経たずに私はぼやく。
ふと、顔を上げた目に赤が飛び込んでくる。
紅い髪に赤い瞳、まるで人じゃないような雰囲気。
シェフィアの仲間でもないような気がする。
あれは何?
私は思わず駆けだした。
その人物を追って・・・だって、人じゃないモノなんてそうそう居ない。
私の中の好奇心に灯が着く。
「あれ?おかしいな確かこの辺にいたのに?」
見失った人影を懸命に探してみるが、見あたらない。
この人通りじゃしょうがない戻るかな。
と思ったときだった。
後ろから肩を掴まれ、裏路地へと引き込まれる。
な・何?
訳も分からず口を塞がれ声も出せない。
「やっと見つけた。シェフィアの女だ」
その声にハッとする。
!!追っ手だ。
迂闊だった。気をつけていたはずだったのに・・・
「ここで消すか?」
「まて、こいつをエサにすれば奴も簡単にやってくる」
追っ手の3人が勝手に話を進めてる。
冗談じゃないわよ。人を勝手にエサにするなんて。
私は口を塞ぐ手に思いっきり噛みついた。
「っ。この女!!」
ここは逃げるが勝ち!!
私は一目散に通りまで駆け出そうとした。
が、後ろから伸びてくる手の方が早かった。
ガツンッ
そのまま壁に叩き付けられる。
「やっと、見つけたっていうのに逃がすものか」
後頭部をぶつけて頭がくらくらする。
けど、ここで大人しく捕まってるわけにも行かない。
「こっちだってここで、捕まる予定なんか無いのよ!!」
傍にあったガラスビンを割り、むちゃくちゃに振り回してみる。
相手は軽くそれを交わし、腕を掴む。
「いい気になるなよ」
目の前の相手が呟くように言った。
もうダメ。逃げられない!!
「いい気になってるのはそっちじゃないのか?」
どこからか声が聞こえる。
「レディーをいじめる男なんて最低」
もう一つ別の声。
誰??
ふっと炎が私の周りを囲う。
「うわっ」
追っ手が私から手を引く。
「いくら人間じゃないからって、殺しちゃダメだよ」
面白がってる声。
「わかってるって。これくらいじゃ死なないだろ」
上から?
私は声のする方へと顔を向けた。
「だって。死なないうちに消えたら?もっとも死ぬっていうのかは知らないけど」
追っ手は舌打ちをしながらも、ばらばらと散っていった。
「あー。さっきの」
追っ手が去っていくのと同時に2人が上から降りてきた。
「さっき?知ってるの?闘華」
黒髪の少女が赤い髪の少女に聞く。
あ、そっか私が勝手に追いかけただけなんだから知る分けないか。
「勝手に人の後を付けてきた奴」
あっさりと赤い髪が答える。
えっ。気づいてた?
「で?私に何か用だったのか?」
赤い瞳が私を覗き込む。
「え?あの別に用というわけじゃ」
「レイ!!」
私が言い終わらないうちにもう一つ別の声。
「シェフィア!」
どうしてここに?私、黙って・・・
・・・黙って来ちゃったんだね。
「追っ手の奴らが来たのか?」
私の腕を掴むなりそう聞いてくる。
そして、傍にいた二人を睨む。
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