2024/07/25 蝉の蛻(せみのもぬけ)
「おじさん、何やってるの?」
お……おじ?一瞬、沸き上がった怒りは飲み込み私は視線を下げて、その子どもを見る。短パンTシャツに帽子をかぶってるその髪は短い。一瞬、男の子?と思ったが、それも飲み込む。
「何やってると思う?」
「毛虫取り」
子供らしい答えに、「そうだね」と頷くと「取れた?」と聞いてくる。
取ったものを見せると、「なにこれ、気持ち悪い」と親らしい大人の元へ走って行った。
今の子にとっては「気持ち悪い」もので「よくわからない」のだろうと思いつつ、再び、樹木の間を見て回る。後ろの公園では子供たちのにぎやかな声がする。誰も木の方を眺めたりはしない。
クシャ
「やってしまった」
軽く壊れやすいセミの抜け殻は、袋の中でいくつかが潰れてしまった。まだ、そのままのものがあるのでそっと袋を仕舞う。
毛虫取りに見えるのか。まぁ。そうかもなと思う。親にしてもこんなものに興味を持つよりは、遊具で遊んでいてくれた方がいいだろう。服の中で殻が潰れた日には……洗濯物で叫ぶことになってしまう。
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