氷の砕ける時間2
【終末】
予想しうえた事だった。
人々が異形のヒレイに憎悪を抱く事は。
イアスも同じように見られる事は。
最悪の事態が起こる事も。
ただ、あの時と同じように何も出来はしない―
イアスは生き返った。
それを見た人々は恐怖と驚愕に満ちた顔だった。
そして、イアスを尊き者として敬った。
だけどそれはイアスの姿をしたヒレイだ。
イアスは居ない。
イアスを殺した人を殺す事は簡単だ。
だけど、イアスが人に生きることを伝えようとしてたのなら
ヒレイは人を生かしてみようと思った。
ただ、殺す価値も無かったのかもしれないけど。
それも永くは続かない。
人は水だけでは生きられない。
冷たい冷たい氷の中で人々は凍えながら死んでいった。
ヒレイに残ったのはこの体だけ。
7つの力は神に選ばれた力。
滅び行く星の為なのか
生き延びる星の為なのか
ヒレイは知らない。
7つの命は神に選ばれた命。
祈りを捧げる為なのか
願いを叶える為なのか
ヒレイには解らない。
神に選ばれし者に
伝える為にヒレイはココにいる。
死に行く為にヒレイは生きている。
キヨ、あなたに出会うその時まで―
冷たい洞窟の奥。
ヒレイを揺り起こす声に目が醒めた。
「鬼炎?どうかしたの?」
そこに居たのは思いつめたような顔をした鬼炎。
「氷霊、私は決めた。キヨを探す」
握られたこぶしがかすかに震えていた。
「鬼炎!死ぬ気?キヨは」
ヒレイの声を遮って鬼炎は言った。
「わかってる。でも、もうあいつは居ない。
あの時間をやり直せはしない。だから、もういいんだ。
氷霊、運命は変わらない」
どこか諦めたその顔。
「もう、疲れたしな」
投げやりなその言葉。
彼が何を見たのか、感じたのか私に出来るのは予想だけ。
眠っている私には止める術が無い。
「……ヒレイは教えないよ。キヨの居場所。
ヒレイは鬼炎が死ぬのはいやだから」
「ああ……」
すっと踵を返し彼は出て行った。
運命は変わらない―
あの時も止められなかった
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