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いなり寿司リフティング
落としたいなり寿司を蹴ってしまった。
「蹴る」という動作をしたのは、中学の体育の授業でサッカーをして以来かも知れない。公園で少年が遊んでいるボールがこちらに飛んできても絶対に手で取って渡すし、フットサルしようぜ♪と声をかけてくる友達もいないので、足を使って何かを蹴るという動作は日常の中に出てこない。
よりによって、15年ぶりに爪先で蹴るものがいなり寿司になるなんて。今日の夜ご飯はうどんだから、うどんのお供といえばやっぱりいなり寿司。そう思って、満を持して買った8個入りのいなり寿司。
スーパーの惣菜パックは思ったよりも優秀で、蹴ったくらいで中身が開いて転がっていくようなことはなかった。
ただ、いなり寿司を蹴ってしまったことよりも、爪先で何かを蹴るという感覚が久しぶりだということに衝撃を受けた。こんなにも「蹴り」と離れていたなんて。
サッカーが得意なら、いなり寿司が地面に落ちてしまう前にリフティングのようにいなり寿司をうまく蹴り上げて手元にキャッチすることができたんだろうか。
中学のサッカーの授業で、試合前に2人組になって10mほど距離を取り、相手と互いにボールを蹴り合う時間があった。野球でいうキャッチボールのような。
相手になった人に申し訳なくなるほど、わたしはコントロールが悪かった。10m先にいるクラスメイトは、コントロールが悪い私からのボールを受けるため、常に左右に動き続けていた。その子は誰よりもウォーミングアップしていたと思う。
こんなわたしに、いなり寿司リフティングなどできるはずはないのだけれど、次に何かを落としそうになったときには挑戦してみても良いのかもしれない。