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気が向いたので窓掃除をした

 つい部屋干しばかりしてしまう。急な雨に降られたり、夕方に洗濯機を回したり、そういう諸々に関わらず干せるから。そうなるとベランダに出る機会もぐっと減る。

 賃貸のアパートでそういうことを続けていると、ちょっと後悔するくらい土埃やら鳥の糞やらの汚れが溜まっていく。加えて面倒で先延ばしにし続けた窓掃除もやらなくてはならない圧を感じる。先日やっと重い腰を上げた。

 水を張った折りたたみ式のバケツと柄付きのタワシ、使い古されたタオルを切って作ったウエス。窓やベランダ用の洗剤などなかったので、台所掃除に使っていたクエン酸のスプレーを用意した。靴箱からベランダ用のつっかけを引っ張り出す。これで使う道具の準備は大体完了した。どれも家にあったもので特別新しく買ったものはない。いかにやる気だけが枯渇していたかがわかる。

 秋というかもう冬の入り口だ。日が差している時間とはいえ寒い。しかしあまり汚したくないので腕をまくる。寒い。さっさと終わらせよう。

 まずは窓を掃除する。ありものだったがクエン酸は窓掃除に使えるらしい。吹きかけてウエスで拭き取る。真っ黒になる。もう一度吹きかける。また拭く。思った以上に汚れている。窓の端には蜘蛛の巣が張っている。何度か拭くとだいぶ汚れが布につかなくなる。一旦ここまでにしてもう一枚の窓に移る。そういえば窓掃除するのはすごく久しぶりだ。ちゃんとやったのは高校の大掃除以来かもしれない。

 私は家事の中で一番掃除をサボってしまう。排水溝とか風呂とかトイレとか弊害が出やすいところはやっているが、部屋の掃除、クローゼットの整理、窓や換気扇などはついつい先延ばしにしてしまう。良くない癖だ。自分の部屋だとそうなってしまうが、なぜか学校とか職場とか公共の場所だと進んで掃除をやる。例に漏れず高校までの学校の大掃除ではめんどくさい窓掃除や床の雑巾掛け、蛍光灯の交換も積極的にやっていた。それに小さい頃から教室や校舎の掃除が楽しく感じていた。この積極性が自分の部屋にも向けばなぁとずっと思っていた。

 窓掃除をやっているとだんだん楽しくなってきた。寒空の中何往復もスクワットのような動きを繰り返して、体が温まってくる。きれいになっていくこと自体はやっぱり楽しい。

 そういえば、人は行動を起こして初めてやる気が出てくると聞いたことがある。わかっていてもなかなか実行は難しいよぅと嘆くけど、やってみて毎回納得する。ある程度きれいになった窓を見て、次は床部分に移る。

 水を含ませたタワシで擦って土を浮かす。ひたすらシャコシャコ、無心だ。ひと段落ついたら少量の水で流す。排水溝が詰まらないように気をつけつつ繰り返す。しかしなかなか手強い。綺麗に掃除完了とまでは行かなかったが、日が落ちてきて体温とやる気が削がれてきたの今日のところはここまで、と切り上げた。最初と比べればかなり綺麗になっった。

 用具を片付けて部屋にもどる。窓の方を見てもそんなに変わらない気がした。まあ危機感があって掃除したわけでもないしこんなもんだよなと思っていた。でも翌朝、窓を見ると違った。光に照らされて水垢が浮かび上がることもなくて空が綺麗に見える気がした。意識しないとわからないかもしれないけど、確かに違う。昨日の自分にありがとう、とちょっと労ってやった。

 みんなが使う場所を掃除すると誰かが褒めてくれたりする。自分の部屋を掃除すると明日の自分が嬉しくなる。自分に褒めてもらえる日が来るってのも悪くないね。


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