40代から変わる人生「記憶の道具」23
反転学習的生活
先週、ある会社で新組織の発表がありました。新しく営業部隊を11の部門に分けて、それぞれにリーダーが任命されました。その11人のリーダーたちが次々に登壇して、5分ずつ抱負を語ったのですが、これ、1時間かかります。当然5人目位になると初めの人のことは忘れてしまいます。
この時間をただ聞いているのはタイパが悪い。ということで、アプリ「キオクの達人」を開いて、表に新組織名、裏にリーダー名と抱負の中のキーワードを書き留めていきました。一件5分もあるのでラクラクです。
このようにメモ代わりに「キオクの達人」をよく使うのですが、いくら「達人」といっても、即11件の人の名前と新組織名を覚えられるわけではありません。その後スキマ時間に記憶をリフレッシュして、1週間ぐらいするとようやく頭に残ってくれます。
さて、このリーダーたちとは、きっとどこかで会って話をすることになるはずです。その時、「○○さんですよね。新しい△□組織はどうですか?」と声をかける。この一言で、関係性がガラッと変わり、聞き出せることの質も激変するのです。
これ、一種の反転学習みたいなものだと思います。反転学習というのは、生徒があらかじめ勉強してから授業に臨むやり方です。「授業で習ってから復習」の逆。予習したことをベースに、教室では、対面でしかできない人とのディスカッションや、予習ではわからなかったことを解決する。この方が創造性や応用力を育むのに効果的だといわれています。私がいたアメリカのビジネススクールは基本これでした。
と、ここまで書いてきて、とても印象的な体験を一つ思い出しました。
ある授業で、外部のゲストが話しにきたときです。彼は教壇に立つと「皆さん、私のことを知っていますか?」と問いかけました。ほぼ全員が頷いたので、いきなり「今日は何を聞きたいですか?」と問いかけたのです。
どんな話が聞けるのかなと、予習課題のない授業だと思ってお気楽気分だった私は、「えっ、いきなり?」「何それ?」と度肝を抜かれました。
しかし、これに間髪を入れずクラスメートの手が一斉に挙ったのです。ザっと音がしたという記憶が残っています。それほどたくさんの手が一斉に挙がったのです。
次々と質問が出て、ゲストはそれをどんどん板書していく。数分もかからず黒板が質問でいっぱいになったところで、「これとこれ、それに…これも関連しますね」と板書した質問のいくつかを丸で囲むと、「では、ここから始めましょう」とおもむろに話が始まりました。
同級生がこれだけ問題意識を持ち、サッと手を挙げられるレベルまで言語化して授業に臨んでいることに驚愕! 「何かいい話が聞けるかもしれない」と、呑気に授業に出ている自分が恥ずかしくなりました。
学校の授業では予習ですが、実生活では日ごろの生活の中でちょっとしたことを記憶に留めておく。それが予習代わりになります。いつやってくるかわかりませんが、次のタイミングでその知識を活かしてより話題を豊かにすることができます。反転学習的な生活を送ることができるわけです。覚えておくことで、日々創造性や応用力を高めることができる。それが反転学習的な生活態度です。なんちゃって。