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40代から変わる人生「記憶の道具」41

短期記憶力の衰えからはじまる認知機能低下

「脳トレ博士」として数々の製品を生み出してきた東北大学の川島隆太教授。その教授が監修した「記憶ドリル大全」というシリーズが高齢者向けによく売れているようです。中をみると、写真やニュースのクイズがたくさんあって、それを覚える練習をするという内容です。

川島隆太先生の「記憶ドリル大全」シリーズ

 背景にある理論は、脳の認知機能が低下すると、まっさきに衰えるのが「短期記憶力」。だからそこを鍛えれば、認知機能低下を抑えられるのではというものです。
 
短期記憶は脳の海馬という部位が担っていて、海馬は成人してからでも、何歳からでも強化できるということが知られています。有名なロンドンタクシーのドライバーの海馬が発達しているという発見以来、いろいろな研究で裏付けられています。筋肉と同じですね。
 
 川島先生の本が高齢者向けだとすると、もう少し若い現役世代、中高年向けには、そんな問題集より、毎日目にするネットや新聞・雑誌に、そして何より日々の仕事で覚えておきたいことがあふれるほど出てきますから、これらを使って海馬を鍛える方が実用的です。
 若いときには、何気に覚えていたことが頭に残っていない。見た覚えがあるというメタ認知も衰えているので、衰えていることへの自覚は遅れがちです。そこに「記憶じゃない、創造力が大切。歳をとって記憶力が衰えるのは当然」という正当化も働くと、覚える努力を怠ります。すると加齢だけでなく、不使用性の退化(ワープロを使っていると漢字が書けなくなるってやつです)も加わってきます。
 最近、若い人たちと話をしていて(といっても50代の人たちです)、気になることがいくつかありました。「あれ」「それ」という代名詞がやたらと多いのです。私が「○○のことですか」と確認すると「そう、それそれ」。そして最後に「森さん、よく知ってますね」と来る。
 ハイ、こちらはスキマ時間にiPhoneアプリ「キオクの達人」を開いて忘れないように努力してますからね、とは言いませんでしたが、短期記憶の衰えを放置していると、認知機能の低下につながりますよとは言ってあげたい。
 オリパラで感動シーンを見せてくれた選手の名前、朝ドラの登場人物、取引先の秘書の名前などなど。日常的なことも覚えておくと、会話が弾み、それがまた認知機能に良い働きをします。これ、実感です。n=1。

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