-宛先人不明-
夏にクラブでゆかりと知り合った。
ゆかりと一緒にいると
ユズルは気持ちが和んだ。
ただちょっと
刺激に欠けるところは
お互いにあったかもしれない。
ゆかりは19歳の短大生で、
冬から春にかけて就職活動を控えている。
対してユズルは大学3年生だが、
大学院に進学しようとしていたので
仕事探しはあまり現実的ではなかった。
12月にユズルはふられる。
ゆかりは就職活動に専念したいとのこと。
ゆかりはとても真面目な性格だったから、
ユズルは何も言うことができなかった。
翌年の12月に
ゆかりから連絡が来る。
久しぶりに
クリスマスに会わないかと。
その年のクリスマスは、
ユズルの手帳には
仲間たちとの予定が
すでに入っていた。
ユズルは、
近いうちにまた連絡する旨
だけを伝えた。
ゆかりとは
久しぶりに会いたかった。
けれども、
当時彼の心には
後輩のマキの姿が
色濃くその影を落としていた。
結局、
クリスマスに
ゆかりと会うことはなかった。
加えて、
マキの心を
引き寄せることが
できたわけでもない。
ユズルはその後
しばらくの間、
宛先人不明の ”手紙” を
懐に抱えることになる。
以上
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