-one more gift-
早いもので
あれからもう3年が経つようだ。
はじめはたくさんいた同年代も
少しずついなくなり、
最終的には彼と僕だけになった。
彼は人当たりがよく
言ってみれば ”社交の鬼 ”であって、
誰に対しても
つつがなく接するのであった。
それは生来からの
彼の持ち味であるかも知れなかった。
それに比べると、
わりと気分屋である自分は
感情が露わになることがよくあった。
しかしながら、
同い年の彼を見習うたびに
「そんなことでいちいち腹を立てるな、、」
というように
省みるきっかけを得ることができたのである。
彼の安定感はすごかった。
学生時代に所属していたクラブでは
サイドアタッカーをやっていて、
その頃からのプレイぶりでも
はっきりと顕れていたのだろうか。
派手さはそんなにないかもしれないが、
ミスがほとんどなかった。
あくまでむらっ気が見られる控え選手にとっては、
手が届かない領域に感じられることがあったようだ。
彼はストリートスタイルの音楽が好きで、
若い頃にちょっとしたMCを
務めていた時期もあったようだ。
有名なミュージシャンとは知り合いの知り合い、、
といった感じなのだろうか。
平時はそんなに口数が多いタイプではなかったが
いろいろと聞き役に徹してくれる所があるので、
こちらとしてはべらべらと余計な事を
口走ってしまうことがあったかもしれない。
「この人が相手だとなんか話してしまう」
そういう思いをすることが
よくあったりはしないだろうか。
そんな同年代の二人も、
そうこうするうちに
あっという間に別れがやってきた。
先にその場所を離れたのは、
なんとも僕の方だった。
たいした働きをしたわけではなかったが、
彼を中心にして
僕宛てにギフトを用意してくれた。
それは春色の代物で、
「どうして僕が欲しかったものが分かるのか」
と驚くほどだった。
彼の目利きの力量は確かだった。
少し悔しい思いをしたくらいだ。
それから少しして彼も
気候が暖かくなったことに乗ずるかのごとく
北方へ移動するようだったが、
もともとは都会育ちだから
何ていうことはない。
僕がいる南方の戦利品など、
そもそもお荷物かもしれないのだ。
今度機会があって
北方のコンクリートジャングルに
相見えることがあったら、
きちんとお礼を述べようかとは思っている。
「いつもはくだらない階段の上から、
時には僕に合わせて
倒錯していただくこともあり、
誠にありがとうございました」
という具合に。
以上