問う今日@東京
神奈川県民が久しぶりに東京駅へ足を運んだ。
なんかどことなくせかせかしていて、
オリーブのカーディガンでは
防ぎきれないようなヒンヤリした風が
八重洲北口を吹き抜ける。
普段横浜市内に住む私が、
東京エリアに来ることは
極めて珍しいのだが、
昨夜は特別で、
栃木に居住する、大学の後輩Tに
急遽会うことになったのだ。
金融関係の仕事をしているTからは、
以前にも増して、
物腰の柔らかい印象を受けた。
「職業病かしら」
そう思わざるを得ない感じだったが、
とあるビルの居酒屋の個室で、
喋りに喋りつくしたのは
やはり私の方であって、
Tはとにかく相槌を打ちながら
ひたすら耳を傾けてくれたのであった。
「ここ最近でここまで傾聴の上手な人は
いたっけかな」
そう思いつつ、
あっという間に時計の針は
午後10時を指しており、
帰宅の合図を知らせていた。
「Oさんは昔から変わらないですね」
そうTは言葉をかけてくれたのだが、
素直に喜んでいいものだろうか。
Tは大学時代のサークルの後輩で、
当時代表をつとめた私の
次期の代表となり、
ちょっとした苦労を共にした仲である。
帰り道、Tは栃木へ北上し、
私は横浜へ南下する。
スマートフォンのLINEで
やり取りをしている中で、
Tは「Oさんは僕にとって、
ずっと大事な先輩の1人です。
早く幸せそうにしてもらわないと
いけないですね笑」
と送られてきたことに
少々戸惑った。
その言葉を目にした時、
「人と人のつながりって
こんなに重いものだったっけか」
とハッとし、
これまでの自分の行動、態度のうち
いくつかのものが思い起こされ、
少し恥じた。
「多くの人に支えられて
生き長らえているのかもしれない」
そう思わずにはいられなかった。
地元の駅に着いた時、
オリーブのカーディガンに心なしか
温もりが宿っているように感じられたのは、
果たして気のせいだろうか。
以上