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-ねずみの師走-


どうやらいまの棲み家を
年明けには
引き払わなければならなくなりそうだ。

そうなると
好物のチーズのことばかりを考えてもいられず、
かと言って他の町にも
よくない細菌が蔓延しているという噂を聞きつけ、
にっちもさっちも行かなかくなった。

ただ元はと言えば、
現在の住まいを変更しなければいけない
とは思っていたのだ。
時期がいくぶん早まっただけのことである。


「どこへ移動しようか」

ひとりで町を歩いて考えてはみるけれど、
あまりよい考えが浮かんでこない。

何も浮かんではこないのだが、
耳に差し込んだイヤホンから流れてくる
一定のリズムの音楽に乗せられると、
自らが置かれている状況に反して
体が勝手に調子付いてきてしまい、
妙な気分に落ち居ってしまう自分がいるようだ。

一定のリズムと言えば、
祖母の通夜で坊主が
「ポクポク」という音を
木魚から引き出していた時に、
「木に縁りて魚を求むという故事からすれば、
なぜ木製でもってわざわざ・・・」
というように余計なことを考えていると、
逆に眠気が誘発されるような気がしたものだ。


以前に通っていた学校では
”ルールを破らない限り自由にやれ”
という校訓があったのを思い出した。

自由にやれと言われても、
敏捷性に反して大した行動力がない
自分の足下はまだ明るいのか。

日が短く、寒さで肌の乾燥を感じるのは、
消毒に追われる日々だけが原因ではなく
加齢のせいもあるのだろうか。

そんな風に
いままでの道のりを
たまに振り返ったりするが、
「そんなにわるいものでもないな」
と思ったりする。


あまり深く考えても続かないので、
今日もとりあえずは
カレンダーの日々を
繰り返すだけになりそうである。



「来年はもっと軽くなるといいな」
と思いつつ、
ひとまず帰宅した後は
空腹感もそのままに
いつのまにか眠りに落ちていた。







以上

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