-ジャーナル-
ピョン平は
B国のとある
出版社に勤めていた。
しかし、
経済情勢が悪化し
B国は隣国Aに
吸収合併されることになった。
会社の方はなんとか
存続できることになった。
出版社の編集長はこう言った。
「A国は経済活性化が命だ。
お前はもっと経済問題の記事を書け」
もとB国の住人は
あまり経済に詳しくないことを、
ピョン平は知っていた。
彼自身もそこまで精通していないのを
認識している。
気乗りはしなかったが、
彼の生活のため
もとB国の住人のために
各国の経済状況について
リサーチし始めた。
しかし、
再び状況が一変する。
A国内で伝染病が蔓延し始めたのだ。
出版社の編集長はこう言った。
「国内の伝染病が一大事だ。
お前はもっと健康問題の記事を書け」
もとB国の住人の
健康意識はわりかし高いことを、
ピョン平は知っていた。
彼自身も昨年妻が
病に倒れたこともあって、
日頃から気にかけている。
家に仕事を持ち込むのは
気乗りしなかったが、
期限もあるため
必要な書類を携えて
その日は帰宅することにした。
「おかえりなさい!」
ピョン平と妻の間には
6歳の子供がいる。
ピョン平が会社から帰宅すると
いつも出迎えてくれるのだ。
妻が入院中ということもあり、
ピョン平は
昨晩作ったスープと
近所で買ってきた黒パンとを
子供に用意した。
妻がまだ元気な頃
「君の料理は美味しいね。
どうしてだろうか」
とピョン平が言うと、
妻は
「・・・ そのうちわかるわよ」
と答えてくれたのを思い出した。
「どうだい。味は?」
ピョン平は子供に聞いた。
「・・・ うーん、、
なんだかお母さんの味に似てきたね」
その言葉を耳にした時、
彼は素直によろこんだ。
妻はピョン平と子供のために
レシピのノートを残してくれた。
しかし、
ピョン平は
昨年パラパラとそのノートを
めくったものの、
それ以上開こうとは
しなかった。
あくまで ”自身の感覚” を頼りに
妻の料理に近づきたい
と言うよりも
近づかなければならない
そう思ったのだ。
以上
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