どうでもよくないサラダ
ランチ時に何を食べようかと思い、たまたま目についたイタリアンに入ってみる。こういうとき、パスタのみを供するレストランは少なく、たいてい前菜的な意味合いでミニサラダが出てくる。
こういうときに出てくるサラダは、たいていどうでも良いサラダだ。
どうでも良いサラダとは、レタスなどの葉野菜に、市販のドレッシングがかかっているものを指す。数時間も前にちぎられたであろうレタスは、冷蔵庫で化石のように寝かされ、冷え冷えの状態で出てくる。
フォークの端でレタスをひっかけて、なかば義務のように口に運んで咀嚼する。そういう時のサラダは、あってもなくてもどちらでも、という無味無臭の匿名性をまとっている。
だから、どうでもよくないサラダが出てくると、嬉しいサプライズなのだ。
昔、鎌倉のフレンチレストランでサラダランチを食べた。サラダランチと言っても、魚か肉のメインが出てきて、デザートにお茶菓子までついている。
その前菜としてサラダが3、4種ほど盛られたプレートが登場する。
キャロットラペであったり、ポテトやさつまいもの根菜をフレンチ風に仕立てたものであったり、1つのお皿という畑の中に、色々な野菜の物語がつまっている感じでワクワクしたものだ。
鎌倉といえば、以前銀座に店を構えていたカレーとシチュー専門店の古川が数年前に移転してきた。オーセンティックなカレーとシチューをいただけるのだが、なかなかユニークなメニューもある。
エビフライが2本、「犬神家の一族」風にカレーピラフに突き刺さっているクリームカレーは、インパクトが強烈である。
メインの前に、前菜として出されるサラダのインパクトも、なかなかのものだ。葉野菜がうず高く積み上げられているが、注目すべきはドレッシングの量。惜しげもなく注がれたドレッシングは、濃厚で美味しい。
たいして期待をしてない前菜のサラダが美味しいと、主菜への期待も否が応でも高まってくる。
ちなみに、サラダを前菜ではなくメインとして食べるのであれば、おすすめしたいのは銀座のローズベーカリーのサラダ。日替わりのサラダが常時3種用意されており、盛り合わせのサラダプレートは、それだけでお腹いっぱいになる。ベイクドポテトにハーブが合わさっていたり、スパイシーなブロッコリーにナッツが混ぜられていたり、味にきちんとアクセントがついていて、飽きさせない構成だ。そして、ちゃんと満腹になるし、パンをオーダーしてつけることも可能だ。
このように今日も、どうでもよくないサラダにめぐり合うため、ランチタイムのレストランに足しげく通うのである。