『12時17分、土浦行き』#1
これから数回にわたり2018年に上演した『12時17分、土浦行き』の台本を掲載していきます。
この台本は、地下鉄サリン事件関係者のインタビューで構成された村上春樹著『アンダーグラウンド』を参考に書きました。
常磐線に乗り合わせた人々のモノローグで進んでいきます。
時事ネタが多いのですが、2018年当時のものをそのまま使用しています。
臨場感を味わうために、常磐線(上野東京ライン)の車窓を収めたBermuda Secondさんのユーチューブ動画と合わせてご覧下さい。
Tさん(女性・当時19歳)/品川駅車内清掃員
JR東日本運輸サー ビスで車内清掃の仕事をしてます。時給は1150円です。
その日も特に変わりなく、いつも通りでしたね。
ガム、ゲロ、使用済みタンポン、注射器。
何でもアリですよ。みんな電車の中でなにやってるんですかね。
でも常磐線の清掃は比較的楽なほうですね。
わたし、品川駅の前は大崎で埼京線を担当してたんです。
さっき時給1150円って言いましたけど、埼京線は別に手当がつくんです。
何の手当だかわかります?
精液の清掃をするからです。
埼京線って痴漢が一番多いって聞いたことありませんか?
床のあちこちに精液が付着してるんです。
その精液を、プロテアーゼというタンパク質を分解する酵素を使って清掃します。
もちろん精液の清掃は気持ちのいいものじゃないんですけど、
手当も月に換算すると結構な足しになるんですよ。
なので、品川に移ってから収入としては減っちゃいましたね。
この12時17分土浦行きは、柏駅停車中に急遽車内清掃が入ることになるんですけど、めちゃくちゃタフな清掃だったらしくて、結構な手当がついたらしいです。