『パラサイト/団子屋の家族④』
さくら/団子屋の女将(宮部純子)
博/団子屋の主人(塚本直毅)
満男/団子屋の息子(玉田真也)
泉/満男の元カノ(長井短)
川﨑/ウーバーイーツ(川﨑麻里子)
ソン/ソン・ガンホ(森一生)
妻/ソン・ガンホの妻(菊池明明)
娘/ソン・ガンホの娘(森本華)
【場面/ソンガンホ宅】
妻「お稽古は月・水・金に2時間ずつお願いします。」
満男「言いにくいのですが、報酬はお幾らでしょうか。
川上未映子が、フリーランスへ仕事を依頼する場合、金額は勿論のこと税込か税抜かまで事前に明示すべきだと言っていましたので。」
妻「その日の東京都のコロナ新規感染者数分を福沢諭吉さんでお渡しするっていうのは。税別で。」
満男「お引き受け致しましょう。」
ソン(登場)
妻「あなたお帰りなさい。」
ソン「お客さまかい?」
娘「お芝居のお稽古つけて頂く先生。」
妻「平田オリザ先生の後を継いで次期青年団の主宰になる人なんだって。」
ソン「おぉ、それなら間違いない。ソンガンホです。娘がお世話になります。」
満男「初めまして、諏訪満男と申します。あなたを尊敬します。日本の演劇人を代表してその気持ちをお伝えします。」
ソン「ありがとうございます。日本人の礼節の尽くし方にはいつも感動させられます。本来なら私が娘の稽古をつけてやれればいいのですが、何しろこのパラサイトバブルでしょう。忙しくて忙しくて。」
満男「お察しします。」
ソン「ダヘの先生は素晴らしい方に決まったけど、家政婦が見つからないなぁ。」
妻「困ったわねぇ。」
満男「家政婦をお探しなんですか?」
妻「色んな人を試したんですけどね。」
ソン「家政婦といえばプライバシーを預けるのは勿論のこと、食事の面など命をも預ける存在ですから。」
満男「実は今、頭に浮かんだ人がいるんですけど。」
ソン「どんな人ですか?」
満男「予約の取れない、伝説の家政婦と呼ばれてる方です。」
ソン「そんな方がいらっしゃるんですか?」
満男「会ってみたいですか?」
ソン「お会いできるんですか?」
満男「僕の友人の友人が、友人の友人がアルカイダの鳩山邦夫氏の友人の友人で、その友人の友人が今お話した伝説の家政婦だそうなんです。」
妻「繋がってる。」
満男「お願いしてみましょうか?」
ソン「でも、予約の取れない伝説の家政婦だって。」
さくら(伝説の家政婦になりすまして登場)「『私はまだまだ、伝説になんかなんねーぞ!(氷室京介の伝説のMCからの引用)』ボウイ世代のサタン志麻でございます。家政婦として精一杯つとめさせて頂きます。」
ソン「よろしくお願いします。」
娘「でも、ププはどうするの?」
ソン「、、うん。」
妻「困ったわね。」
さくら「どうなさったんですか?」
ソン「私たちは今日、一旦韓国に戻らなければいけないのですが。」
娘「 私だけ家に残ってぺぺのお世話をする。」
妻「ダメに決まってるでしょ。今日は光復節なのよ?この日だけは絶対に帰るの。」
ソン「8月15日の独立記念日は韓国人にとって一番大切な日なんだぞ。」
娘「じゃあププはどうするの?」
さくら「ぺぺ?」
娘(犬を連れてきて)「この子。」
ソン「保護犬なんです。捨て犬で殺処分されそうだったところを引き取ったんです。」
さくら「セレブがよくやるやつですね。」
ソン「ペットホテルに預けようとしていたんですが、コロナで今どこも受け入れていないようなんです。」
さくら「実は今、頭に浮かんだ人がいるんですけど。」
ソン「どんな人ですか?」
さくら「予約の取れない、伝説のペットシッターと呼ばれてる方です。」
ソン「そんな方いらっしゃるんですか?」
さくら「会ってみたいですか?」
ソン「お会いできるんですか?」
さくら「私の友人の友人が、友人の友人がアルカイダの鳩山邦夫氏の友人の友人で、その友人の友人が今お話しした伝説のペットシッターだそうなんです。」
妻「鳩山邦夫さんって方、韓国の仁川空港みたいな人間相関図のハブになってる。」
ソン「是非お会いさせて下さい。」
娘「でもダメだよ。ププは極度の人見知りだから、今日の今日会ってすぐ預けるだなんて、そんなことできるわけないもん。」
博(伝説のペットシッターになりすまして登場)「(犬に)よぉし良い子だ、おいで?(犬を抱っこしようとする)」
娘「やめた方がいいと思います!噛まれますよ!」
博「ほぉらおいで、そうだ、よぉし良い子だ。(犬を難なく手なづける)」
娘「うそでしょ!信じられない。」
博「アッハハハハハ、やめろって、くすぐったいって。(犬に顔をペロペロさせる)」
娘「ぺぺが初対面にも関わらずこんなに心を許すなんて。」
博「私が責任を持ってお預りします。」
ソン「でも、予約の取れない伝説のペットシッターだって。」
博「『フォークのバンドじゃねーんだから。ジメっとすんのは似合わねぇと思うから。(氷室京介の伝説のMCからの引用)』ボウイ世代の伝説のペットシッターです。」
ソン「よろしくお願いします。」
妻「これならププも安心。」
娘「あれ?(さくら・博・満男の匂いを嗅ぐ)」
ソン 「何してるんだ。やめなさい。」
娘「おかしいなぁ。同じ匂いがする。三人とも、お寺みたいな、お線香みたいな匂い。」
妻「こら、いい加減にしなさい。」
ソン「娘が失礼なこと言って申し訳ございません。」
さ/博/満「いいえ。」
ソン「それでは、私たちは飛行機の時間がありますのでそろそろ。留守をよろしくお願いします。」
博「かしこまりました。」
娘「じゃあねププ。」
満男「僕が空港まで送って行きましょう。」
ソン「助かります。それでは。」
さくら「行ってらっしゃいませ。」
(ソン・ガンホ 娘 満男 退場)
博「(犬を撫で)この犬が俺に懐くの当たり前じゃねぇか。俺が捨てたんだから。」
さくら「ププなんて呼ばれてるけど、ウチで飼ってて江戸川の土手に捨てた万次郎だって一目でわかったよ。」
博「でもさっきは危なかったな。匂い。家族だってバレないかヒヤヒヤしたぜ。」
さくら「帝釈天のお香の匂いが骨まで染み付いてんのよ。」
博「でもよ。俺に言わせりゃ匂うのは向こうだぜ。」
さくら「そうね。」
博「だろ?」
二人「キムチ。」
博「あんな美人な奥さんでも、しっかりしたのがプイーンと来るもんな。」
■映像【グッチで着飾るソン・ガンホ】
さくら「見てこの写真。ちょっと金が入ればグッチだの何だのって、品がないのよ。」
■映像【地味なセーター姿の渥美清】
さくら「それに比べてお兄ちゃんは庶民的だった。」
博(ポンジュースを見つけ)「ん? なんだこりゃ。ポンジュース? ポン・ジュノ果汁100%だってよ。」
さくら「アーティストぶっちゃってるけど、商売っ気丸出しね。」
■映像【太極旗(韓国国旗)】
博「あの国はみんなそうなんだよ。大統領だってみんな最後は汚職で捕まるだろ?」
さくら「格差社会を描いた映画で儲けて、自分たちはこの贅沢三昧。」
博「でもよ。そのお陰で俺たちがこうして仕事にありつけたんだから。ポンジュノ監督及びソンガンホ一家に感謝だ。パラサイトにぃ、、」
二人「乾杯!(ポンジュースを飲む)」
さくら「パラサイトに、パラサイトしてやったわ。」
博「パラサイト(寄生)じゃねぇ。インベーション(侵略)。」
さくら「インベーションじゃない。ガバナンス(統治)。」
博「ガバナンス。いいねぇ、ガバナンス。」
■映像【太極旗に日の丸が重なってゆく】
博「オキュペーション(占領)。アナキュセーション(併合)。」
さくら「占領。併合。いい言葉。」
■映像【日の丸が太極旗を完全に侵食する】
博「でもよ、俺たちが来てあの家族幸せそうな顔んなったろ?」
さくら「えぇ。私たちがこの家にインフラを整えてやったんだから。」
博「この調子でどんどん進出してよ、東アジアの皆さんを幸せにするか、ってか?」
(間)
博「おいさくら。今空気が入れ替わったのわかったか?
さくら「うん、わかったとも。」
博「今更って感じのただのパラサイトのパロディかと思って見てたらよ。」
さくら「うん。」
博「鋭角にシリアスな要素入ってきてよ。」
さくら「うん。」
博「劇場の空気変わっただろ。」
さくら「あぁ、変わったねぇ。」
博「芝居で空気を入れ替えてやったんだよ。」
さくら「換気しないといけないからねぇ。」
博「これが、新しい演劇様式だよ。」
さくら「すごいよあんた。」
(さくらの携帯電話が鳴る)
さくら「(電話に出る)もしもし。」
満男(声)「お母さん、、助けて、、ギャー!!!!!!!!」
さくら「ちょっと満男?どうしたの?満男?」
ソン(声)「韓国人として、片付けなければならない用事を思い出したので。これから戻るから、首を洗って待ってろよ!!!」
ソン一家(満男の生首を掲げながら登場)
さくら「満男ー!!!」
ソン「Aー②。大韓民国の活動の継続、再開のための金。」
博「戦後補償しただろうが!」
一同(ソン一家VSとらや一家の格闘)
◼️舞台【紙吹雪】血しぶきを思わせる赤の紙吹雪
一同(戦いが終わり倒れている)
満男「こんな時、、叔父さんがいてくれたら、、」
博「満男、お前まだそんなこと言ってるのか?お義兄さんはもう帰ってこないんだよ!」
さくら「お兄ちゃんは、、お兄ちゃんはもうこの世にいないの!」
■SE【男はつらいよテーマ】
トラ(寅さんのコスプレをしたトランプ大統領が登場)
一同「と、ら、さん、、もとい、ト、ラ、ンプさん! リスペークト! リスペークト! リスーペクト!」
■映像【韓国国旗と日の丸→星条旗】
泉(前半のシーンからずっと放って置かれたまま)「私回収されてないんだけど。 処理に困るなら出さないでよ!」
終わり