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『パラサイト/団子屋の家族②』

さくら/団子屋の女将(宮部純子)
博/団子屋の主人(塚本直毅)
満男/団子屋の息子(玉田真也)
泉/満男の元カノ(長井短)
川﨑/ウーバーイーツ(川﨑麻里子)
ソン/ソン・ガンホ(森一生)
妻/ソン・ガンホの妻(菊池明明)
娘/ソン・ガンホの娘(森本華)

【場面/とらや】
満男「(泉に)さぁ、どうぞ。」

泉「おじゃまします。」

さくら「まぁ、なに?本当に泉ちゃんなの?」

泉「はい。」

さくら「本当に本当?」

泉「本当です。」

さくら「まぁ。元気だった?」

泉「はい。」

博「久しぶりだねぇ。」

泉「お久しぶりです。」

博「なんか、ちょっと雰囲気変わったね。」

満男「親父、今時女性に向かって『雰囲気変わったね』なんてNGワードだぞ?」

博「そりゃ俺だって相原勇には言わないよ。」

満男「ごめんね、デリカシー無くて。」

泉「いいのよ満男さん。確かに私は変わった。世界中で悲しみを見て来たから。」

さくら「泉ちゃんは海外で何のお仕事してるんだっけ?」

泉「UNHCR。国連難民高等弁務官事務所で働いてます。大学で勉強してる頃から難民問題に興味があって。私の親友がイランの難民だったの。 だから彼女たちと一緒にシリアやレバノン、イラクなんかの難民を支援するNGOのスタッフとして働いてるうちにUNHCRの人たちと親しくなってね。そのまま現地採用になったの。」

一同「、、、」

泉「つまんない? 私の話。」

一同「いやいや/そういうんじゃないんだけどね(など)」

博「この辺じゃ鰻屋だの煎餅屋だのしかいないからさ。」

さくら「そうそう、ちょっと戸惑ってるだけ。」

泉「それならいいんだけど。」

さくら「よく来てくれたわね。」

満男「どうだい?久し振りの柴又は。」

泉「変わらないわ。でも人が少ないみたいだけど、選挙でもやってるの?」

さくら「違うのよ。コロナで観光客がさっぱりでね。」

泉「まぁ。」

博「でもな、満男と泉ちゃんはてっきり結婚するもんだと思ってたけどな。」

満男「やめてくれよ。泉ちゃんに迷惑だろ。」

泉「迷惑なんかじゃないわ。私もそのつもりだった。」

さくら「あら。」

泉「いつだったかな、、満男さん覚えてる?満男さんが他の女の子と喋ってるの見て私カーっとなってシットしちゃって。」

満男「あぁ、あったね。」

さくら「えぇ?何その話。聞かせて?」

泉「シットしちゃって。ね?」

満男「顔に似合わず凄い臭いなんだよ。」

さくら「なんで嫉妬が臭うの?」

泉「ウンコ出ちゃったんですよ。」

博「シットって何?ヤキモチとかの嫉妬じゃないの?」

泉「あ、ごめんなさい、英語のシットです。えーとだから、、日本語だとウンコです。」

満男「泉ちゃんは直ぐ英語が出ちゃうから。」

泉「sorry」

さくら「ウンコ漏らしちゃったって事?」

泉「yes」

さくら「いやだもう、、」

一同(笑)

川﨑(ウーバーイーツで登場)「とらやさん、ウーバーイーツです。」

満男「あぁ、川﨑さん。ご苦労さま。」

泉「お知り合い?」

川﨑「前に満男企画に出演させて頂いて。」

さくら「『出演させて頂いて』なんて、そんなへり下っちゃダメよ。」

泉「(川﨑に)役者さんなんですか?」

川﨑「はい。今泉力哉監督と満男さんの共同プロジェクトでやった『街の下で』っていう作品に出演させて頂いて。」

さくら「また出た『出演させて頂いて』。」

川﨑「こっちの方が楽なんです。これ定形文なんで。」

博「パワハラはダメだとかって言ってるけど、結局のとこ日本人は落合より星野仙一が好きだしな。」

泉「今泉力哉監督って知ってます。海外でも高く評価されてますよ。それで、役者さんが何でウーバーイーツの格好してるんですか?」

川﨑 何でって、バイトしなきゃ食べていけませんから。大丈夫ですか?この人。」

泉「そんな有名な監督さんの作品に出演している役者さんでも食べていけないんですか?」

満男「泉ちゃん。こっちの世界も大変なんだよ。知り合いには、献血で血を売って生活してる役者もいるよ。その役者がこの間吸血鬼役やってたのには笑ったけどね。」

泉「不条理ね。」

博「(川﨑に)今日のご注文は?」

川﨑「今日は草団子の注文が2件です。」 

博「あいよ。お客さんのお名前は?」

川﨑「(携帯を見て)○○さんと、高樹沙耶さんです。」

博「(コソコソ下から箱を出し川﨑に渡し)コレでお願いね。

さくら「ちょっとあんた。何でこっちからじゃなくて裏からコソコソ出してんのよ。」

博「裏から?俺が?コソコソ?」

さくら「(川﨑から箱を取り)貸しなさい。(箱を開けると大麻型の団子)何よコレ。あんた草団子ってコレ、何の草で作ってんのよ!」

博「しょうがねぇだろ!イリーガルな団子でも売らなきゃやって行けねぇんだよ!『お帰り寅さん』で一回は世間を騙せても、もう次は通用しねぇ。山田洋次先生にこの先アイデアがないことが世の中にバレちまったんだからな!」

満男「僕が主役をやるよ!そして新たな『男はつらいよ』シリーズを作るよ!」

さくら「満男、確かにあなたはいい俳優よ。でもお兄ちゃんは特別なの。誰にも代えが効かないの。そういう人なの。」

満男「知ってるさ、、そんなこと。僕が一番わかってるよ。川﨑さん、ウーバーイーツの仕事、僕に紹介してくれないかな?」

川﨑「だったら、私の代わりにやりませんか?実は私、今日でウーバーイーツ辞めるんです。」

泉「でも、役者さんじゃ食べていけないんでしょ?」

川﨑「ウーバーは続けます。今度ウーバーが派遣型風俗に参入するんです。ウーバーミーツっていう名前の、まぁデリヘルです。そっちで働くことにしました。」

泉「ウーバーミーツ?」

川﨑「そこにイメクラ部門があって。イメクラって、言ってみればお客さんと作り上げるお芝居じゃないですか。私、お芝居好きなんですよね、やっぱり。お芝居がしたいんです。大好きなお芝居してお金貰えるのって、もうこれしかないんですよ。」

さくら「もうそっちのお仕事は決まってるの?」

川﨑「はい。最初のお客さんは、ブーメランチャンネルさんっていう方です。」

満男「その名前って、オールナイトで岡村隆史が例の発言する呼び水となったメールのラジオネームじゃ、、」

博「コロナ明けでイメクラ嬢の芝居の質が上がるって訳か。」

一同「がんばってね。(など川﨑を励ます)」

泉「ごめんね麻里子。助けてあげたいけど、今の私にはとても手が回らない。だって世界には貧困で苦しんでる人が13億人もいるんだもの。」

川﨑「みなさんありがとうございます。満男さんコレ(ウーバーのバッグを渡し)よかったら使って下さい。(携帯を渡し)ここに注文が来ますから。」

満男「ありがとう。」

川﨑「最後に、私に何か演出つけてくれませんか?」

満男「(玉田企画で実際に川﨑につけた演出を)」

川﨑「演出ありがとうございました。それじゃ。(はける)」

満男「(携帯が鳴る)あ、注文来た。」

さくら「どうするの?」

満男「やるよ。」

博「おぉ、いいぞ息子。注文はなんだ?」

満男「ジャージャー麺、サーロインステーキ乗せ。」

博「誰がそんなブルジョワなもん。」

満男「ハングルだから、韓国人みたい。」

さくら「ハングル読めるの?」

満男「僕は青年団でもあるから。韓国とは交流が深いんだ。」 

博「息子よ。お前を誇りに思う。」

満男「、、ソン・ガンホ。」

さくら「注文して来た人?」

満男「うん。」

博「どっかで聞いたことあるな。」

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