【BTS(防弾少年団)】「I NEED U」
収録
『화양연화 pt.1』(花様年華 pt.1)
2015年4月29日にリリースされたミニアルバム。
2曲目として収録され、本アルバムのタイトル曲。
2015年4月30日、1theK公式Youtubeチャンネルに過激なシーンがカットされたMVが投稿。
2015年5月1日、HYBE LABELS公式Youtubeチャンネル及び1theK公式Youtubeチャンネルに、オリジナルバージョンのMVが投稿。
概要
リリース当時、「I NEED U」についてRMがインタビューで語った内容。
自分の思い通りにならないところで咲き誇って萎んでいくゆえに、一瞬の美しさが至高のものとなり、魅了され、心動かされる。恋も青春も同じようなものだと言っている。
Introでは自分と夢と音楽だけだった世界に、「君」が現れ、ただただ自分の存在を世界に知らしめるために反抗していた少年たちは、内面での葛藤に続き、他者との関係性というものが連れてくる試練にぶち当たる。
思い通りにならない「君」へのもどかしい気持ち、突き放されてもなお求めてしまう未練に隠された、「君」のせいでどうにかなってしまいそうな制御できない自分自身との邂逅。
青春真っ只中、終わりゆく恋をきっかけに自己や愛といったものを疑い、揺らぐ少年たちを歌う楽曲。
鑑賞
素敵な訳はあみにさんの動画からお借り致しました。
SUGAのターンでは詞でも映像でも「君」が空けた穴の大きさを強く印象付けられる。ダブルベッドに一人横たわり、誰もいない空白を撫でるシーンが印象的。
決定的な言葉ではなく「言い訳みたいな言葉」ではぐらかすだけの曖昧な態度をとる「君」が、何を考えているのか、主人公には訳がわからず、二人は口論をしたのかもしれない。
いくら言葉を重ねても「君」が離れていってしまう事実は変えられず、戸惑いや諦めを抱えている。
J-HOPEの詞に出てくる「君の言葉」は、SUGAのパートに出てきた別れ際のものではなく、付き合っていた頃のものではないか。
目隠しをするように現実から目を逸らさせ、真実を上手に隠してきた「君」の綺麗な言葉が、全て終わってしまった今になって主人公を狂わせている。
今はもうそばにいなくてもその言葉だけで主人公の全てを持っていってしまうような「君」が、どれだけの存在だったか、思い知らされているようだ。
「君」が主人公の元を離れて行こうとしているのは変えられようのない事実で、それを止められないのもわかっているのに、どうしても愛することをやめられないことを許してほしい、という痛々しいほど健気な態度を主人公が見せている。
「ごめんね」「許して」という言葉からは、好きになってしまった自分が、その気持ちを諦めきれない自分がまるで悪いかのような感じがする。
「君が憎いよ」という歌詞は、こんな自分にさせておいて去って行こうとするなんて許せないという愛情の裏返しだろう。「君」に惹かれるがあまり、自分を見失いかけている。
「消えてくれ」「憎い」という感情と、「君が必要だ」という相反する感情を抱えて葛藤している主人公。
一方的に愛して去っていく「君」にも、理屈ではないところで「君」を求めてしまう自分にも、やりきれなさや疑問を抱えていて、それでも否定できない美しさだけが確か。
「너무 차가워」(直訳:あまりにも冷たい)という歌詞は、「君が」冷たいという意味の他、「美しい」という真実が持っている迫るような冷たさの意味があるのではないかと個人的には思っている。
2番に入り、視点は自分自身に向かっていく。「君」と全てが終わった後、どうして二人がこうなってしまったのかと一人で堂々巡りをする少年。
けれど、何を考えていようとも、自分自身が言うことを聞かないのだから、結局意味はない。
「君」を諦めようとし、余計なことはよしてくれと突き放したはいいものの、全て終わってしまうと「君」の綺麗な言葉が、主人公を緩やかに狂わせていく。
そして落ちに落ちてしまった自分がもはや使い物にならないことに、独りで気がついてしまう。
「頼むよ」という君への懇願は2回目。
1回目は「言い訳みたいな言葉は慎んでくれ」というものだった。
2回目は「自分が尽くしてあげるから、どうか離れていかないでくれ」というもの。
ここで主人公の心境の変化が明確になっている。すなわち、自分を見失っているがゆえに非常に自分勝手になってしまっているかのよう。
自分で自分を制御できないことに耐えきれず、しかもその状況を自分では脱することができないことに憤り、絶望し、苛立っているから、それをどうにかしたいために、「君」に離れないでほしい、戻ってきてほしいと頼みこむ。
この、主人公が自分だけで精一杯になっている様子が、青年期の不安定さを上手に表現している気がする。
ある意味で「愛」に溺れきってしまっている主人公。
JINのブリッジのこの一節が美しくて個人的な好きポイント。
人生で最も美しい瞬間にあって、その輝きの中蹲ってしまった主人公がそこにいる。
どうして自分は「君」を選んだのか?どうして「君」は離れていってしまうのか?どうして「君」との思い出は置き去りにして一人で生きていけないのだろうか?
たった独りの少年には、わからないことがあまりにも多すぎた。
1番では葛藤ゆえの戸惑いを感じさせ、切実さを帯びた「I need you girl」という歌詞でしたが、今回は主人公のエゴが見え隠れしているように聞こえる。
とにかく「君」をもう一度取り戻せるなら…と奮闘する姿が痛々しくも映るが、再び愛し合うためというよりはむしろ自分のため、「君」によってもうこれ以上前後不覚ではいられない、といった自分本意な理由から求めているように感じられる。
それでも、このフレーズがあるから再び切なさが吹き出し、主人公に同情を抱いてしまう。
RMはインタビューで、この歌詞に関して、「終わりつつある愛や青春について渇望する切ない表現」としてタイトル曲である「I NEED U」を最もよく表していると語った。
MVも激しさを最も増す部分。
落ち切ってしまった主人公は、結局、自分自身のことを自分では何とかできない。そんな勇気はない。関係性を終わらせることばも、お互いの気持ちを否定することばすらも、とにかく「君」任せ。
そしてまた「I need you girl」と、「君」を求めてしまう。
余韻
この楽曲における「君」は解釈の余地が与えられていて、いろんなものに捉えられそう。
あまりにも美しく、そして自分を強烈に捉えたように見えて呆気なく過ぎ去ってしまう「君」は花様年華だったり、届きそうで届かない夢だったりするかもしれない。
「愛してる」という表現はデビュー以来初めて曲中で用いられているということだが、少年が用いる愛の言葉には対象がなんであれ、どこかいじらしいものを感じずにはいられない。
最後に、ジンのブリッジが本当に美しくて大好きということをもう一度言って終わります。
自分は受験期に塞ぎ込んでいたとき、「どうしてこんなに空が青いのに、勉強しなきゃいけないんだろう」と本気で思っていた。
「空が青い」というただそれだけなのに、どうしてこんなにも不思議に感傷的で心揺さぶられるのか、いつかわかりたいものだ。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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