竹宮惠子・内田樹「竹と樹のマンガ文化論」小学館新書2014年の感想
竹宮惠子先生と内田樹先生のマンガ文化論です。アラサーの秘書に「風と樹の詩」をしっているか、ときいたところ知らないようでした。本書の主たる対象の20代以下の読者は、このタイトルのシャレがわかりない。
日本のマンタが発展した理由に手塚治虫先生の存在がありますが、社会的条件として若い才能の金をはらったこと、オープンソースで進化がはやかったこと、というのは卓見とおもわれます。
また、今後のマンガについて実用書をマンガで描く、というのはありだと思われました。
少女マンガのヨーロッパ志向については、これはフランスびいきで反米の内田先生のひいきのひきたおしではないでしょうか。24年組はヨーロッパ志向だけど、例外もたくさんあるわけで必ずしもアメリカは排斥されていないように思われます。吉田秋生先生にしても渡辺多恵子先生にしても後世に残るレベルのアメリカものはあります。少年マンガ青年マンガにはアメリカものはたくさんあります。例えば「ジャイアント台風」「空手バカ一代」もアメリカでの闘いがかなりの部分をしめています。
小学館新書
竹と樹のマンガ文化論
2014年12月6日 初版第1刷発行
著 者 竹宮惠子(たけみや けいこ)
内田 樹(うちだ たつる)
発行人 伊藤礼子
発行所 株式会社小学館
ISBN978-4-09-825222-0
C0295
目次
第一章 急激な「発展力」の秘密
マンガ界は若い才能に気前がいい
同じ日に同じ値段の雑誌が届く物流網
契約なしで、締め切りに原稿が入る奇跡!
憑依系の人以外はマンガ家になれない?
第二章 発明を上書きする「集合知の力」
オープンソースと共同作業
ペン先の試行錯誤
中国では、作品はまずネット公開
翻訳のオープンソース化
マンガ制作のリテラシー
世界に広がる日本オリジナル
日本マンガの「孫世代」
第三章 読者をわしづかみにする「作品力」
一〇万部売れて初めて市民権を得る
マンガの基礎を学んだ『マンガ家入門』
主人公は完全円形、サイドキャラは半円形
『風と木の詩』着想の源
寺山修司との邂逅
ウチダ先生、長年の仮説の真偽
少女マンガ史を変えた? ヨーロッパ一周旅行
NASAのツアー体験
ヨーロッパの文化的発信力
第四章 マンガ家の不屈の「精神力」
マンガのオーソドックス
自分の「ヴォイス」を持て
狙って描いたヒット作
必勝パターンを組み合わせる
苦悶のスランプ
少女たちの支持を得た!
読者アンケートが作品を育てる
『風と木の詩』単行本最終巻は少しだけ厚い
第五章 複雑で深い描写のための「表現力」
マンガをめぐる産業
読者が読むスピードを意識して描く
脚本=シナリオの重要性
映画に負けるな
もし宮崎駿さんがマンガ家になったら?
アニメ化は原作どおりがいいのか?
原画の保存はマンガ家の大問題
電子出版の課題
第六章 何でもマンガで学べてしまう「教育力」
シュリンクされるコミック単行本
始めると止められない悪しき傾向
「機能マンガ」って何?
嚆矢となった『エルメスの道』
アスベスト問題をマンガ化
大学を集団的徒弟制度の場に
教える側も教わる側も運命共同体
オフィシャルなスピンオフってあり?
「冬ソナ世界」のファン愛
第七章 日本人特有の「マンガ脳の力」
読み手に対する意識と敬意
読者の想像力や知性を信じる勇気
MANGAと欧米コミックは別の表現物
マンガの表現に正解はない
ビッグビジネスになったマンガの悩ましさ
マンガ家の共同体としての力
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