司法試験受験を視野にいれた初学者の勉強方法

司法試験受験対策を視野にいれた法律の勉強方法

                弁護士 岡本 哲

確実な勝利のためには敵を知り己を知る必要があります。

 敵、司法試験の出題者採点者ははどういうひとたちでしょうか。

 司法試験委員(司法試験及び予備試験の出題及び採点を担当 だいたい大学教員と実務家が半々)は30代後半から60歳くらいまでの年齢ですので40年くらい前から15年くらい前の司法試験に合格あるいは落第しています。

 筆者は昭和63年の司法試験合格ですので、試験委員のおおくと司法試験受験時代は同じ立場といえます。

 学者のなかにはまったく受験したこともないひともいますがごくわずかでしょう。

 時代としては、主として司法試験合格者数500名時代です。教養選択と口述試験が司法試験にも、司法研修所卒業時の2回試験にももれなくついていました。
 司法試験については基本書(学者のかいたある程度ぶあついもの。刑法でいえば団藤・刑法綱要、大塚仁・刑法概説など現在なら大谷講義・前田概説など)と百選あるいはケースブックシリーズが出題範囲であり、それをマスターすべし、というのがだいたい40年前から変わらず言われています。これにかかる時間が授業・ゼミ・答案練習会検討会・純粋個人学習等すべての形態をふくめて6000時間必要とされています。
 受験回数制限がなく、本気受験が平均6回の受験でようやく合格していた旧試験の時代だと、たいていの合格者はこの時間をこえていたようです。合格したら、だいたいふつうのサラリーマンの25年分くらいの地位にあたる地位があたえられていました。いまはロースクールをでて弁護士に就職できた場合8年めくらいでしょうか。
 司法試験合格者は東京大学の4年ストレートで5人程度、京都大学の場合は定員が半分のせいか2人程度の合格でした。秀才中の秀才を選ぶ試験であったといえます。大学4年間で6000時間を捻出しようとすると(実際は4年目の7月にヤマがありますので)3年つかえたとして、1年に2000時間、365日でわると全くやすまず1日7時間の勉強が必要となります。授業についていけるのは東大で1割といわれていますから、大学の授業についていける1割がさらに勉強をかさねていくことになります。合格者500人時代だと5月におこなわれる択一試験がだいたい5-8倍くらいの倍率で、これに京大の場合4回生で30人程度うかっていましたから、ここで1割程度にしぼられ、7月におこなわれる論文式でされにその1割にしぼられることになります。
 授業以外の予習復習をしたうえで数時間を勉強にコンスタントにさくことになります。この時間を確保できるのはかなり健康にも金銭的にも動機にもめぐまれた(!)ひとでしょう。8年間ならこの半分のペースです。実際は受験6回程度で合格していたのは時間確保の困難性もあったことでしょう。

 旧司法試験と新司法試験では受験者の数量・質・科目ともに相当異なっています。ただし、採用する側では旧の時代より質的に差のない人材を求めています。
 旧の場合の人材は前にいったとおりの知識を備えたひととなります。あと、ほとんどが浪人経験があり大学時代の遊びの経験があることになります。

 予備試験は100名程度のエリート選出ですので、旧試験での4年合格か5年合格レベルの秀才をえりだすシステムとしてはたらきます。予備試験はロースクール卒業年生のエリート選択の側面がつよくなります。ただ大学3年で合格してしまうと法律関係以外の教養とか社交スキルに不安がのこるかもしれません。 
 ロースクールにいっていないひとは2年分のハンディキャップを克服し秀才レベルの6000時間の勉強を確保していく必要があります。

 法科大学院(法曹養成制度)の評価に関する研究会の「法科大学院(法曹養成制度)の評価に関する研究会報告書」平成22年12月というものがあります。インターネットで入手可能です。

伊藤塾塾長が現状認識について報告されています。
(司法試験に)合格に必要な力
?  徹底した基礎力
?  考える力(論理的思考力・未知の問題に対処する力)
? 日本語力(特に書く力)

これらを泥臭い学習を続けて習得するしかない。法科大学院では受験対策ができないため、基本的には自学自習または受験指導校を利用。
法科大学院の勉強だけで十分であるのか。
?に関しては。法科大学院の授業が効果的。入学前に??を習得しているかが新司法試験の合否に大きく影響する。
 結局、合格しやすい学生を入学させることができたかどうかが合格率の差。

 となると法科大学院入学段階で東大京大の上位1割レベルの学力(未習)あるいは東大京大の法学部の上位1割レベルの法律知識+学力がほしいことになります。予備試験の場合は、さらにこれをうわまわる必要があります。

法学部の2年から勉強して既習2年として4年少々で6000時間というのはそんなに無理のない数字といえます。しかし、2年間で6000時間を確保するのはしんどいことを覚悟してください。
 
6000時間の勉強の前提となる東大・京大の法学部入学レベルの国語と社会の力があるかを自分でチェックしておきましょう。
センター試験の現代国語で、満点がとれていたか。いまもとることができるか。
東京大学・京都大学の現代国語で満点がとれるか。
これらの問題は常識とややはずれた答え、表面的な理解だけではなく皮肉についても回答をさせるので、今後の授業でのホンネ部分の理解とかに必要になってきます。
ホンネとタテマエでは、たとえば新司法試験はロースクールでしっかり鍛えた人間を厳しく卒業で選抜する、卒業生のレベルは旧司法試験合格者が前期修習をおえた段階の実力がある、というタテマエでした。第1回新司法試験は、それにあわせた難易度でおこなわれましたが、そのレベルに達した答案はほとんどなく、選抜の用をなさないものであったのでした。その後はレベルにあわせて2000人前後がうかるような簡易な内容になってきている。しかしタテマエはかわっていません。このような事情がわかるようなひとでないと法を適用する実務はできないということになります。タテマエだけではいけません。
 社会 日本史の明治以降
 世界史の西洋史・アメリカ史
 現代社会
 政治経済
 センター試験については90点以上がとれる状態か

 国語力がたりない場合は中学レベルまでさがって復習の必要はあります。東大のまとめ問題・英文解釈はできていたのか、京大の長文の英文解釈・英作文はできていたのか、ここでの国語力はきいてきます。また英文解釈でうんうん悩んだ経験は基本書や判決の難解な文章のとりくむときの踏み台です。
読書歴はありますか?佐藤幸治・憲法はいまでは関西でのみつかわれていましたが文学的素養がかなり必要な文章でした。

法学書以外によんでおいてほしいもの
刑事系
裁判長、ここは懲役4年でどうすか
それでもボクはやっていない
映画・評決・12人の怒れる男
民事系
マンガはナニワ金融道 佐藤賢一 王妃の離婚
公法系 塩野七生・ローマ人の物語 佐藤賢一・小説フランス革命

予備試験はロースクール3年間をとばしてよいという認定ですのでロースクール3年レベルの法学知識と一般教養が必要です。
理系の教養があればかなり有利になっています。
公務員試験を並行して受けながらやるのもいいかもしれません。
公務員試験の教養問題は問題集があります。ここで問題集のときかたです。
正しい問題集の解き方
1、記述式問題10題を解いてみる。
2、解答解説を見て、間違えた問題には×を、正解した問題にはもう二度と解かないでいい印をつける。
3、問題の解答解説を熟読し、間違った問題を中心に理解を深める。正解した問題は知らない知識の確認のみ。
4、×のついた問題を解きなおす。
5、再び間違えたものに×をつけ、全て1度正解するまで繰り返す。
6、次の10題に進む。

これが正しい勉強のやり方です。
このやり方のいいところは以下の点です。

1、理解だけでなく、再構築を成功させてから先に進む。
勉強は「理解」しただけでは身につかず、「再構築」が必要だと書きましたが、この方法でやれば必ず1度は自分で正解までたどり着かないと先に進めないので、必ず再構築をすることになります。

2、復習のときポイントが明確になる。
正解した問題に知らない知識が含まれていなければもうその問題を復習する必要はないため、二度と解かなくて良いです。
さらに×の多い問題ほど自分にとっての難しい知識だということになるため、復習をする際に「×のついたものだけを復習しよう」ということや「あまり日にちがあいていないため、3個以上×のついた覚えにくい知識だけを復習すれば大丈夫」などと復習が効率的に出来るようになります。

復習の方法
1、△のついた問題と×のついた問題しかやらない。
  △の問題には間違えたら×を、正解したら二度と解かない印をつける。
  ×の問題を間違えたら、もう1つ×を加える。
  しかし、この日に書く×は今日書いたものだとわかるように×の形を変えるか、色を変えるなどすること。
2、今日間違えたもののみを全問正解にする。
3、ノルマが終わったら、もう一度その日間違えた問題のみだけを解きなおす。

以上が復習の方法になります。
1度全問正解にすることが重要であるため、その日に間違えた問題のみを全問正解の状態にすれば大丈夫です。
復習時なので、1度は全て解けるようにした問題です。
その状態をもう一度作り出し、何度も100%解ける状態に持っていくことを繰り返すことが目的です。
普通の勉強のやり方のように、間違えた問題に×をつけて解説を読んだだけで先に進むのでは、その日にその問題が解けるようになっていません。
毎回100%にする、全問正解にすることによってメンテナンスをするのです。

各自のアレンジの要素
二度と解かないでいい印は各自で考えてください。
私は設問番号に大きく×をつけていました。◎を書くひともいました。
そこは各自で決めてください。
また、復習を何回かしている際、間違えた問題(×がついた問題)だけをやっていましたが、×が1個か2個しかついていない問題は間違えないことに途中で気付いたとします。
そういうときは、×が3個以上の問題だけを復習し、×が少ないあまり過去に間違わなかった問題に関してはとばすなり、軽く解説を見るだけにするということをしてください。
ここは各自の感覚に頼らざるを得ない部分ですが、要は「正解するならしなくていい。忘れた部分だけを常に思い出し、100%にする」というのが目的です。
そのためのアレンジは各自でしてください。
間違えた問題だけを紙にまとめて何度も見るようにするのもいいですし、3個以上×のついたものは毎回勉強を始める前に軽く確認してから始めるなど、100%の状態、全問正解の状態を維持するためには工夫を凝らしてください。
特に模試前に一気に復習する方法などを確立していると、入試本番前の調整などにも強くなります。

全問正解のまとめ
全問正解にするというのは、全てその日は全て解けるようにするということです。
その日に解けないのに、次の日に解けるようになっているわけがないですし、一度解いた問題も解けるようになっていないのに、一度も解いたことのない模試の問題、入試問題が解けるようになるわけはないのです。
だから必ず、一度「理解」した問題は「再構築」し、100%全問正解の状態を常にキープしてください。

これは穴埋め式とか数学の証明問題とか計算問題とかには有効です。

しかし、法学関連では大学受験用参考書の数学でいえば赤チャートレベルの問題集しかありません。

うえの例は数学・国語・社会の大学入試にはあてはまります。

ところが司法試験の法学の場合はいい問題集がないのが問題です。
旧司法試験の時代ですと、初級問題集にあたる定義集・定型文言集については各自が基本書等を加工してつくる、あるいは長年の勉強のうちに頭にはいるというのが過去のやりかたした。30年来の予備校の発達で上級の問題集とか解答集とかは充実していますが、いまのところ初級中級についてはありません。
 それは、そもそも以前は初級中級レベルで躓くようなひとが受験する試験ではなかったからです。

 秀才中の秀才がうける試験とされていました。
 中級についてネット利用の択一用プログラムのいいものがふえてきています。

 初級については、わたしが提供していきたいとおもっています。教育評論家の監修もへています。

 まずは民事系をつくってみます。順序は倒産法・民事手続法・民法・商法となっていきますが順序はすこし科目横断的にやっていこうとおもっています。
1日民事系30分の復習をしましょう。刑事系20分公法系20分を予定していきます。これより先の記述はありません。なげ銭方式です。

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