【SPIRIT of SEAGULLS】vol.4「フテオからの脱却」 西村 文男('08年度卒)
まず最初に言っておくと、自分はバスケットボールがみんなほど好きではない。漫画の主人公や、今まで出会ってきた人たちは「バスケが大好きで上手くなりたい!」がほとんどな気がする。
もちろん、小1でバスケ部に入部した時は大好きだったかもしれないが、正直言うと今はゲームや漫画を読んだりしてる時のほうが幸せを感じている。
なので、これを読んでる方は、プロバスケットボール選手の中にも変わった考えを持ってる人がいるんだな、と軽い気持ちで読んでほしい。
まず、東海に行くきっかけになったのは、高校最後の年に、昨年引退された石崎巧先輩('06年度卒/元・琉球ゴールデンキングス)からの電話
「一緒にバスケやらないか」
「うん、やる」
と即答だった。
ただ、東海大はその時には同期のあべじ(安部潤/'08年度卒/元・島根スサノオマジック)を獲得しており、高校の監督には「他のガードを先にとる所にお前は行くのか?」と少し怒られたのを思い出す。
ただ、高校までエリートコースで、U18日本代表にも入っていた自分はその時、自信に満ち溢れており、「このナンバーワンルーキーがすぐに活躍してやるよ!」と海南の清田信長(スラムダンク)ばりのテンションで意気揚々と入学した。
しかし、大学最初の1年は苦い思い出でしかなく、Aチームにはいたものの、セカンドチームから抜け出せない事にずっと不満を感じていた。
今となっては自分に足りない物が多すぎたからだと分かるのだが、まだ18歳そこらのぺーぺーにはそれがわからず、練習中、常にイライラしていて、先輩からついたアダ名が「フテオ」。その時も陸さんにたくさんの助言をもらっていたのだが、不満しかない自分は右から左へと流していた。
「上手いだけじゃだめだ。影響力のあるプレイヤーになりなさい。」
しかし、フテオにはその意味がまったく理解できておらず、ある日もペアシューティングでパスが毎回雑すぎて、「もっと相手の事思って出しなさい」と言われた時は、「シュートはそいつ次第だからパス関係ないじゃん」と思っていたり、ジェイソンキッド(多分)は、どんなにいいパスしても味方が取れなかったら、「私のミスだ」と味方に声をかけると言われた時も、フテオは期待どおり「いいパス出して取れなかったらそいつのミスだろ!」と、王様気分が抜けていなかった。
そんなスーパー自己中フテオが、今ではペアシューティングではしっかりと回転かけたパスを出し、ゲーム中、少しでもズレただけで「ごめん、パス悪かった」と味方に声をかけている。
この年になってはじめて分かる陸さんの助言の数々。何よりも、人として成長するために大切な事をたくさん教えてくれていたこと。それに当時から気付けていたら、今頃自分は市長選挙にでも出馬しているんじゃないかとまで思う。
なので、これから東海に入るかわいい後輩たちにアドバイスをするとしたら、陸さんの「次ラスト」は信じられないが、「助言は信じて心に刻め、必ず自分のためになる」。(こちらOBだけが笑ってくれれば満足)
最初の話に戻るのだが、じゃあなぜバスケを続けているの?と思うだろう。答えは何よりも、「やりがいと達成感を感じられる」からである。大好きだからじゃなく、違う理由だったとしても、今年でプロ13年目、そして、毎年優勝を狙える強豪チームに、ベテランとして居続けられる理由の1つに、東海大の4年間と陸さんの助言が影響してくれている事に間違いはない。
「人は変われる。一度に大きくではないが少しずつ。」
みんながフテオではなく、影響力のある良き選手になる事を願っています。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?