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神様時計(毎週ショートショートnote)

我が家には、代々伝わる「神様時計」というものがある。深い色の木目と、ローマ数字の文字盤がレトロな柱時計だ。
普通の時計と違うのは、文字盤の十二時の上に、小さな神棚を思わせる開き戸がついていること。そして、時報が鳴るたび、そこから鳩時計のハトのように、小さなお稲荷様の像が出てくるのだ。

僕は小さい頃から、毎日このお稲荷様を拝むよう躾けられてきた。大人になり、実家の店を継いだ今でも、欠かすことなく続けている。そのお陰かどうかは知らないが、時代と共に商店街が寂れても、近所に大きなスーパーが出来ても、店が傾くことはなかった。むしろ、けっこう繁盛していると言っていい。

ただ、ちょっと困るのは、毎晩売り物がひとつだけ、消えてなくなることだ。父と祖父は「お供えだと思え」と言って気にも止めないが、犯人は間違いなく「神様時計」だ。
なぜって、なくなるのはいつも、ふかふかの油揚げ。僕の家は、代々豆腐屋なのである。



トップ画像出典∶photoAC
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