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第1章ー5 違憲審査のターゲットをみることでわかること

(今更ですが敬体と常体を混合しているのはご容赦ください)

今回は、マクロのフレームワークにおける視点のうち、2つめの「何を違憲審査のターゲットとするか」についてのお話です。

前前前回の記事で書いたとおり、大きく分けて4つのカテゴリから「違憲審査のターゲット」を理解すればよいでしょう。

  1. 法令一般審査

  2. 適用審査

  3. 処分審査

  4. 私人間適用

それぞれ、何を意味するのかと、カテゴリの意味についてお話します。
ほとんどの説明は、前前前回に紹介した曽我部連載に準拠している点が少なくなく、可能であればそちらにも目を通してほしいと思う。

法令一般審査

一般的には「法令審査」と呼ばれることの多い概念だが、そのような呼び方は多少語弊があるという理由で、法令一般審査という用語を用いる。
法令の違憲性を争うものですが、後述する適用審査と区別するために「一般」と付け加える必要があります。というのも、適用審査も、ある意味、法令の違憲性を検討する側面もあるためです。

昔の受験生は、どのような場合に法令審査をして、どのような場合に適用審査をするのかわからないという悩みをよく持っていたが、今もそうだろうか。
これに対する答えはある。法令が適用されうる事例の集合を考えたときに、原告にあたる人が争いたい適用例が、法令の典型的(一般的)な適用例であるのであれば、法令一般審査を行うべきである。
逆に、法令が典型的ではない適用のされ方をしているときに、そのような非典型的な場合に法令を適用することは違憲であるという主張をするときは、適用審査と呼ぶべきだ。

さて、法令一般審査に関する一般的な説明をしてきたが、次は、法令一般審査であることが、ミクロのフレームワークにどのように影響するのかについて気になっているのではないか。
端的に言うと、法令一般審査をするのであれば、目的手段審査(違憲審査基準論)を用いることができる。

裏を返せば、法令一般審査ではない判断プロセスにおいて目的手段審査を用いることには、立ち止まって考える必要がある(すべからくダメとまではいかない)。
その理由は、いくつかの説明の仕方があるとは思うが、例えば駒村圭吾「憲法訴訟の現代的転回――憲法的論証を求めて」35頁など(日本評論社、2013年)では、目的手段審査の思考様式は政策的思考であり、(政策を議論する場所で制定された)法令を分解してその合憲性を検証するものであるから、法令審査のための審査手法である旨、説明されている。
(その他にも、大石和彦「「『目的』と『手段』の2段構え」の型をとらない憲法判断――処分審査を中心に」渡辺康行編『憲法訴訟の実務と学説』130頁以下において、同様の論点についての言及がある。)

ただ、法令一般審査なら、すべての場合において目的手段審査を行えるかというと、そうではない。
(他説もあるかもしれないが、)目的手段審査というのは、枠づけられた利益衡量であり、そのため、「どのような憲法上の権利(または客観法)が問題となっているか」の視点において、比較衡量になじまないとする客観法に基づく違憲審査を行う場面では、法令一般審査を行う場合であっても目的手段審査を使うべきではないだろう。
また、手続的権利の場合は判例の規範があることが多く、請求権の場合同様であるとすると、結局は、自由権に基づく法令一般審査を行う場合に目的手段審査を使える、ということになる。

最後の点については、もう少し検討の余地はあるが、今回はここまでにして、明日は適用審査と処分審査について触れたい。

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