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第2章ー1 自由権×法令一般審査 三段階審査と違憲審査基準論 本章の流れ

今回から扱うのは、ミクロのフレームワーク、その中で最も代表的な類型である、自由権×法令一般審査について扱います。
この類型だけでもかなり情報量が多くなってしまうので、3つの章にわたって説明をすることにします。

おさらいになりますが、マクロのフレームワークによれば、この類型は、自由権という実体的権利が問題になっているので三段階審査が使えるし、法令一般審査を行うので違憲審査基準論(目的手段審査)を使えます。
本章では、まず、三段階審査と違憲審査基準論という理論それ自体について説明をしたうえ、その後に三段階審査と違憲審査基準論の接合について説明します。
この接合というワードは、受験生的には馴染みがないと思います。
そもそも、三段階審査は大陸法系であるドイツ由来の理論であり、違憲審査基準論は英米法系であるアメリカ由来の理論です。そんな多国籍な理論を、多くの受験生は当たり前のようにがっちゃんこ(接合)しているのです。
よくよく考えたらWhy Japanese peopleなことをしているわけなので、この点は理論的に整理して理解を深めておいた方が望ましいです。

なぜそんなことを学ぶ必要があるのでしょうか。
まず、基本書などのテキストを読むときに役立ちます。
あまり意識したことのない人もいるでしょうが、研究者の中には、違憲審査基準論を重視する人、三段階審査を重視する人、両理論を積極的に接合していこうとしている人など、いろんな立場に立つ人がいます。さらにいうと、違憲審査基準論寄りの三段階審査論者や、三段階審査論寄りの違憲審査基準論者というようなグラデーションもあります。
世の基本書等は、そのような研究者ごとに微妙に異なっている立場に立って書かれているわけですから、そのことを意識して読まないと混乱してしまうことでしょう。
後の章でお話することですが、結論からいうと、受験生の皆様は、三段階審査論風味の違憲審査基準論の立場で答案を書くのが良いのではないかと考えています(つまり、違憲審査基準論がメインで、三段階審査論はおまけ)。そのような微妙な理論感覚というのを、受験生の皆様には身に着けてもらいたいです。

「接合」について理解を深めるべき理由はもう一つあります。
違憲審査基準論と三段階審査論という異国の理論を接合する以上、それぞれの理論は、当初の姿から形を変えることになります。なんの考えもなく接合してしまうと、自己矛盾をきたしてしまうことでしょう。また、接合をする目的というのは、言ってしまえば両理論のいいとこどりをしましょうということですが、それぞれの理論の「いいところ」はなんなのかを理解しなければ、答案を書けるようにはなりません。

さて、三段階審査論と違憲審査基準論、それらの接合について学ぶ必要性を理解いただけましたでしょうか。
次回から、より詳しく中身に入っていきます。

なお、次章の第3章では、自由権×法令一般審査における判断枠組み定立までの事案分析Ⅰを、その次の第4章では判断枠組みの当てはめである事案分析Ⅱを扱います(事案分析Ⅰと事案分析Ⅱは、こちらの記事で紹介しました)。


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