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切字18種類の例句


👇俳句についての記事をまとめてあります。
随時追記あり。ご参考になれば幸いです。
(´>∀<`)ゝ

品詞分類表



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⚠️今回の記事を読む前にこちらを読んでいただくことをお勧めします。


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決められた切字とは

俳句の切字は18種類あります。
室町時代の連歌師、専順せんじゅんの『連歌作法書』には以下の語が「切字」として挙げられています。

かな・けり・もがな・らむ・し・ぞ・か・よ・せ・や・つ・れ・ぬ・ず・いかに・へ・け・じ

今回は、これら18種類の切字を用いた例句をまとめます。


①助詞「かな」

薄曇うすぐもりけだかき花の林かな

「かな」は詠嘆を表す終助詞である。
終助詞とは原則として文末に用いられる。
「私はこう思うけどあなたはどう思いますか」という判断の揺らぎを相手に託す切字。
しっとりとしたイメージの詠嘆。
基本的に体言(名詞・代名詞)のほか用言(動詞・形容詞・形容動詞)の連用形に接続する。


②助動詞「けり」

木がらしの果は有りけり海の音

「けり」は過去と詠嘆を表す助動詞である。
(過去から今に至るまでずっとそこに存在していた事実に対して)今まで気づいていなかったことにハッと気づいた時の驚きを表す。
どっしりとしたイメージの詠嘆。
動詞と助動詞の連用形に付くが、形容詞の場合は「楽しかりけり」「悲しかりけり」とカリ活用の連用形に付く。「楽しけり」「悲しけり」は間違い。


⚠️伝聞過去、すなわち人づてに聞いた過去の事実にたいして用いられるのが原則。
しかし俳句は一人称で詠まれるため伝聞過去は使われない。したがって俳句で用いられる「けり」は基本的に詠嘆。


③助詞「もがな」

なくもがな初雷はつかみなりのいなびかり

「もがな」は願望を表す終助詞である。
「~であったらいいなぁ」
例句は「ないほうがいいなぁ、初雷のこの稲光は」



④助動詞「らむ」

たれたれも東向くらむ月の暮

「らむ」は現在の推量を表す助動詞である。
「今、~だろうか」
例句は「世の中の誰もが東のほうを向いているだろうか。月が沈む今。」


⑤形容詞「し」

落ちかかる桐の葉かろひとへもの

「し」は形容詞の一部。
形容詞の終止形は切字になる

⚠️過去の助動詞の連体形も「し」になるので混同しないように。助動詞の連体形は体言につながる(尋道)ので切字ではない。


⑥助詞「ぞ」

産ず女うまずめひなかしづくあわれなる

「ぞ」は念押しの終助詞である。
「~であることよ、~であるか」
例句は「子供が産めない女性が雛飾りをしているぞ、哀れだなぁ」
(いや、ほっとけや)( ꐦ◜ω◝ )


⑦助詞「か」

淀舟よどぶねののぼるおぼろ月

「か」は疑問の係助詞である。
「~だろうか」
今日でも日常語として使用される。
例句は、淀川を往き来する川船の動きと月のイメージが活きている。


⑧助詞「よ」

蓬莱ほうらいちごはひかかるめでたさ

「よ」は呼びかけと感動が入り交じった間投助詞である。
今日でも日常語として使用される。


⑨動詞「せ」

思ひあらばくるわにおといかのぼり

「おとす」という動詞の一部。
例句に限らず、動詞の命令形は切字になる


⑩助詞「や」

唐崎とまりあはせて初時雨

「や」は詠嘆を表す間投助詞である。
直前の言葉をシンプルに強調、詠嘆する。
きっぱりとしたイメージの詠嘆。
どんな品詞にもどんな活用形にも接続する。
きわめて自由度の高い助詞。



⑪助動詞「つ」

月は見広沢酒ひろさわさけひとおよぎ

「つ」と「ぬ」は完了の助動詞である。
今ちょうどその動作が終わったことを表す。
「つ」と「ぬ」はほぼ同じ意味で用いられる。
「つ」は意識的動作を表す動詞に用いられる助動詞、
「ぬ」は無意識的動作を表す動詞に用いられる助動詞。
例:
❌日が暮れつ
⭕️日が暮れぬ
日が暮れるのは意識的に行われる動作ではないから。
俳句では「つ」の用例は稀で、圧倒的に「ぬ
」が多く用いられる。


⑫動詞「れ」

心あれば炭竈すみがまつく芳野山

「つくる」という動詞の一部。
例句に限らず、動詞の命令形は切字になる


⑬助動詞「ぬ」

古足袋の四十に足を踏みこみ

「つ」と「ぬ」は動詞の連用形に付く完了の助動詞である。
今ちょうどその動作が終わったことを表す。
「つ」と「ぬ」はほぼ同じ意味で用いられる。
「つ」は意識的動作を表す動詞に用いられる助動詞、
「ぬ」は無意識的動作を表す動詞に用いられる助動詞。
例:
❌日が暮れつ
⭕️日が暮れぬ
日が暮れるのは意識的に行われる動作ではないから。
俳句では「つ」の用例は稀で、圧倒的に「ぬ
」が多く用いられる。



「つ」「ぬ」には、完了以外に強意の意味がある。

鶏頭の十四五本もありべし

この句の「ぬ」は完了を表しているのではなく、下の推量の助動詞「べし」の意味を強めて「きっと~に違いない」という強い推量を表している。

また、⑭打消の助動詞「ず」の連体形「ぬ」と紛らわしい場合があるので注意する。


⑭助動詞「ず」

一こゑはおもひもあへほととぎす

「ず」は打消の助動詞である。未然形は「ず」「ざら」、連用形は「ず」「ざり」、連体形は「ぬ」「ざる」、已然形は「ね」「ざれ」と二種ある。終止形は「ず」、命令形は「ざれ」のみ。
俳句でも使用頻度が高い。


⑮副詞「いかに」

扇折おおぎおいかにもちたる汗のごひ

「いかに」は副詞である。
副詞とは自立語で活用がなく、主に用言を修飾する品詞である。
「どのように」
例句は「本来は涼をくれるはずの扇でも、作っている扇職人はいったいどのように汗をぬぐっているのか」


⑯動詞「へ」

常住じょうちゅうをふるまひ給鹿のこゑ

「給ふ」という動詞の一部。
例句に限らず、動詞の命令形は切字になる


⑰動詞「け」

つけてゆ草花くさばなうりがかへるかた

「ゆく」という動詞の一部。
例句に限らず、動詞の命令形は切字になる


⑱助動詞「じ」

花なくばくる人あらななまがり

「じ」は打消推量の助動詞である。
「~まい」「~ないだろう」
例句は「桜の花がなければ来る人もあるまい。こんなに道がいくえにも折れ曲がった所は。」


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上記の切字は室町時代に決められた切字なので現代俳句では使用しないものもあると思いますが、参考になればと思い載せました。


初心者で勉強中の身です。
間違いがあればご指摘いただけると幸いです。
┏○))ペコリ


「や」「かな」「けり」についてはこちらにまとめてあります👇


袋小路 綴乃ふくろこうじとじの


参考図書:

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