④-1 係助詞「ぞ」「こそ」「や」「か」
👇俳句文法(文語)についての記事をまとめてあります。
随時追記あり。ご参考になれば幸いです。
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●助詞の分類
助詞には大きく六つの種類がある。
①格助詞
主に体言や活用語の連体形に接続し、その語がどのような文の成分になるかを示す助詞。
(例)が・の・を・に・と・へ・より・にて等
②接続助詞
用言や助動詞に接続し、上の文節と下の文節との関係を示す助詞。
(例)ば・とも・ど・ども・て・ながら・つつ等
③副助詞
種々の語に接続し、さまざまな意味を添える助詞。
(例)すら・さへ・のみ・ばかり・まで・など等
④係助詞
種々の語に接続し、文末に一定の活用形を要求する助詞。
(例)ぞ・なむ・や・か・こそ・は・も
⑤終助詞
文末にあって、禁止、詠嘆などの意味を添える助詞。
(例)かな・な・ぞ・か・ばや等
⑥間投助詞
文中や文末にあって、語調を整えたり、詠嘆などの意味を添える助詞。
(例)や・よ等
●係助詞とは
種々の語に接続し、強意・疑問・反語などを表し、文末にある一定の活用形を要求する助詞のこと。
係助詞には、次の七つがある。
ぞ・なむ・こそ・・・強意
や・か・・・疑問点・反語
は・・・話題の提示・対比的な強調
も・・・並列・添加・強意
係助詞で使用頻度が高いのは、【ぞ・こそ・は・も】の四つ。
疑問・反語を表す「や」「か」は、俳句ではあまり用いないのでざっと理解しておけばよい。
強意の「なむ」は、まず使われることはないので特に意識しなくてよい。
係結びの法則とは、係助詞を用いた文の末尾に、終止形以外の活用形が来る原則のこと。
【ぞ・なむ】→連体形(強意を表す)
【や・か】→連体形(疑問・反語を表す)
【こそ】→已然形(強意を表す)
【は・も】は係結びを引き起こさないのに係助詞に分類されている。その理由は、結びに終止形を要求する助詞だから。(係結びの法則とは言わない)
●係助詞「ぞ」「なむ」は連体形を要求
例:
①田の池に春の夕焼ぞうつりたる
この句は、中七の「ぞ」に呼応する形で、句末の「たり」が連体形になっている。
「ぞ」を用いていなければ、【田の池に春の夕焼のうつりたり】であった。
「たる」・・・助動詞「たり」の連体形
②霧しぐれ富士を見ぬ日ぞ面白き
「面白き」・・・形容詞「面白し」の連体形
③朧三日月吾子の夜髪ぞ潤へる
「潤へる」・・・助動詞「り」の連体形
④香水の香ぞ鉄壁をなせりける
「ける」・・・助動詞「けり」の連体形
●係助詞「こそ」は已然形を要求
例:
①勇気こそ地の塩なれや梅真白
同様に、この句でも上五の「こそ」に呼応して、中七「なり」が已然形の「なれ」に変わっている。(その下の「や」は切字なので係結びの法則には関係ない。)
②鈴に入る玉こそよけれ春のくれ
「よけれ」・・・形容詞「良し」の已然形
③海女とても陸こそよけれ桃の花
「よけれ」・・・形容詞「良し」の已然形
④桔梗や信こそ人の絆なれ
「なり」・・・助動詞「なり」の已然形
●「こそ・・・已然形」の逆説用法
係助詞の応用的な用法を見てみよう。
例:春暁や人こそ知らね木々の雨
この句では、「こそ」の結びに打消の助動詞「ず」の已然形「ね」が用いられて、係結びが成立している。
しかし、この「ね」で意味が切れるかと言うと、そうではない。と言うのも、「春暁や」で一度切れているため、中七でも切れるとすると三段切れになってしまう。
つまり、この「ね」は切る意識で使われているのではなく、そのまま下の「木々の雨」につながっていく用法だと言える。
このように、【こそ・・・已然形】の係結びが文中に用いられる場合は、逆接確定条件を表すという決まりがある。この句は、「人は知らないけれど、木々には雨(が降っている)」という意味を表している。
●係助詞「や」~「やらん」は「やあらん」
例:沈丁の香の強ければ雨やらん
句末の「やらん」という表現は、「やあらん」の約まった形。「やあらん」の「や」は疑問の係助詞、「ん(む)」は推量の助動詞「む」の連体形なので、係結びの法則が成立している。意味としては「雨であろうか」という疑問を表す。
●係助詞「や」「か」の文末用法
疑問・反語の係助詞を俳句に用いた例は多くは無いが、句の末尾にもちいる例がある。
例:
①抱く吾子も梅雨の重みといふべしや
②吾妻かの三日月ほどの吾子胎すか
このような「や」「か」の使い方を文末用法と言う。①の句の「や」は切字とは異なる。
係助詞②はこちら👇
袋小路 綴乃
参考図書: