②-3 接続助詞「て」単純接続と音便
👇俳句文法(文語)についての記事をまとめてあります。
随時追記あり。ご参考になれば幸いです。
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●助詞の分類
助詞には大きく六つの種類がある。
①格助詞
主に体言や活用語の連体形に接続し、その語がどのような文の成分になるかを示す助詞。
(例)が・の・を・に・と・へ・より・にて等
②接続助詞
用言や助動詞に接続し、上の文節と下の文節との関係を示す助詞。
(例)ば・とも・ど・ども・て・ながら・つつ等
③副助詞
種々の語に接続し、さまざまな意味を添える助詞。
(例)すら・さへ・のみ・ばかり・まで・など等
④係助詞
種々の語に接続し、文末に一定の活用形を要求する助詞。
(例)ぞ・なむ・や・か・こそ・は・も
⑤終助詞
文末にあって、禁止、詠嘆などの意味を添える助詞。
(例)かな・な・ぞ・か・ばや等
⑥間投助詞
文中や文末にあって、語調を整えたり、詠嘆などの意味を添える助詞。
(例)や・よ等
●接続助詞とは
用言や助動詞に接続し、上の文節と下の文節との関係を示す助詞。
上と下との関係によって、順接、逆接など、さらにいくつかに分類できる。
(例)ば・とも・ど・ども・て・が・に・を・で・して・つつ・ながら・ものの・ものから・ものを等
数は多いが、特に重要なのは、
【ば・とも・ど・ども・て】
順接と逆接についてはこちらにまとめました。
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●単純接続の「て」
田一枚植ゑて立ち去る柳かな
この句の「て」は、動詞「植う」の連用形に接続し、その下の動詞「立ち去る」との間をつないでいる。その関係は順接でも逆接でもなく、二つの動作が連続して行われたことを表している。
このような関係を単純接続と言う。この「て」は現代語と大きく異なる点はないので難しく考えなくてよい。
●ウ音便に要注意
連用形接続の「て」に動詞が接続する場合には、しばしば音便が現れる。特に間違いが多いのがウ音便である。
誤:花菜漬買ふて明るき傘ひらく
「買う」連用形は「買ふ」→ウ音便は「買う」
↓
正:花菜漬買うて明るき傘ひらく
●音便とは何か
まずは現代語の例文で考えてみよう。
花が咲いて、鳥がさえずる。
「咲く」という動詞は、口語ではカ行五段活用で、連用形は「咲き」となる。したがって本来なら「咲きて」となるべきところだが、実際には「咲いて」と言う。
このように、おもとして発音上の便宜から、本来の活用にない音に変化する現象を音便と呼ぶ。
●音便の四種類
こうした現象は文語においても起こる。いづれも連用形で、後ろに接続助詞の「て」や完了の助動詞「たり」が接続する場合に現れる。
動詞の音便には四種類ある。
①書きて→書いて・・・イ音便(イ音に変化)
②言ひて→言うて・・・ウ音便(ウ音に変化)
③死にて→死んで・・・撥音便(ン音に変化)
④立ちて→立って・・・促音便(つまる音に変化)
原則的に、
カ行・ガ行の四段動詞はイ音便に、
ハ行の四段動詞はウ音便に、
バ行・マ行の四段動詞とナ変動詞は撥音便に、
タ行・ハ行・ラ行の四段動詞とラ変動詞は促音便になる。
例句:
①泡ひとつ抱いてはなさぬ水中花
「抱く」はカ行四段活用なので、連用形は「抱きて」→イ音便「抱いて」となる。
②物忌みと言うて西せり秋の人
「言ふ」はハ行四段活用なので、連用形は「言ひて」→ウ音便「言うて」となる。
「言って」と促音便になることもある。
③雨呼んで羊蹄の花了せり
「呼ぶ」はバ行四段動詞なので、連用形は「呼びて」→撥音便「呼んで」となる。
④翅わっててんてう虫の飛びいづる
「わる」はラ行四段動詞なので、連用形は「わりて」→促音便「わって」となる。
●よくある間違い
❌いつまでも笑ふてをりぬ捨案山子
「笑ふ」はハ行四段活用なので、連用形は「笑ひ」。
「笑ひて」が本来の形だが、ウ音便(または促音便)になる。ウ音便のウはア行のウなので「笑うて」(または「笑って」)となる。
ハ行の「ふ」ではないことに注意する。
同様に、イ音便の「イ」はア行の「い」であり、ハ行の「ひ」やワ行の「ゐ」になることはない。
袋小路 綴乃
参考図書: