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香港レンズ:クレジットカードの受け取り方から考える、香港と日本のサービス設計の違い

先日、香港のCitibankから「クレジットカードの更新時期が近づいています」というメールが届きました。カードは郵送され、受け取り後にアクティベーションするだけという至ってシンプルな手続き。

これを見て、数年前の経験を思い出しました。二拠点生活をしている私が、たまたま香港滞在中に日本のクレジットカードが届くことになり、本人による受け取りが必要という規定により、結局カードは発行銀行に返送されてしまいました。

各国のカード受け取り方法を見てみると、その違いは興味深いものがあります。アメリカでは通常の郵便物として配達され、オンラインや電話での簡単なアクティベーションで利用開始できます。

韓国は配達時の本人確認という点では日本と同様のシステムを採用していますが、その後のプロセスが大きく異なります。デジタル技術を活用し、アプリでのバーコード読み取りやセキュリティコード入力による効率的なアクティベーション方式を導入しているそうです。

台湾では郵送か銀行での受け取りを選択できる柔軟なシステムを採用しています。

日本の現行システムには、平日昼間の受け取りが困難な点、再配達による時間的負担、7日間という短い保管期限、そして配達員の負担増加など、多くの課題があります。これらは、デジタル時代における顧客体験の観点から見ると、明らかに改善の余地があります。

最近の三菱UFJ銀行での貸金庫窃盗事件は、従来型の「人による確認」が必ずしも最高のセキュリティを担保するわけではないことを露呈しました。物理的な本人確認や対面での手続きは、一見すると厳重に思えます。しかし、そこに人が介在することで、むしろセキュリティの脆弱性が生まれる可能性があるのです。

一方、デジタル技術を活用したアクティベーション方式は、人的要因を最小限に抑えることができます。暗号化された通信、生体認証、そしてAIによる不正検知など、テクノロジーによる多層的な保護は、むしろ従来の対面式よりも高い安全性を提供できる可能性があります。香港やアメリカなど、アクティベーション方式を採用している国々では、このデジタル技術を活用したセキュリティ対策が有効に機能しています。

セキュリティの本質は、単なる「厳重さ」ではなく、システム全体としての「堅牢性」にあります。香港やアメリカのように、デジタル技術を効果的に活用することで、より安全で便利なサービスの実現が可能なはずです。日本の金融機関には、この視点からの抜本的なサービス設計の見直しが求められています。時代に即した新しいサービス設計への移行を、真剣に検討すべき時期に来ているのではないでしょうか。

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