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トルコ旅行 Day6 その1 古代ローマの息吹と環境保護の課題 ―パムッカレ・ヒエラポリス訪問記

真っ白な石灰棚と鮮やかな青い水のコントラストで知られる世界遺産パムッカレ。「コットンキャッスル」の愛称で親しまれるこの地を、メヴラーナ博物館を後にして訪れました。

2000年の歴史を持つ温泉地

石灰棚が連なる広大なパムッカレの全景。白く輝く地形が天然の芸術作品のよう

紀元前2世紀から続くこの温泉地には、17もの源泉があり、その水温は35度から100度まで様々。古代ローマ時代から、この地の温泉は療養や保養の場として重宝されてきました。

期待と現実の狭間で

乾燥が進む石灰棚の現状。かつての豊かな水の痕跡が残る白い地形

しかし、心待ちにしていた訪問で目にしたのは、期待とは異なる光景でした。かつての写真や観光案内で見た豊かな水量は影を潜め、白い石灰棚の大部分が乾いた状態となっています。

ドローン映像:上空から捉えた石灰棚の全容。水量の減少が一目瞭然の空撮映像

ドローンによる空撮映像からは、この水量の減少がより顕著に確認できます。水資源の過剰使用やインフラ政策の失敗など、様々な要因が指摘されていますが、この貴重な観光資源の将来が懸念される状況です。

今に生きるローマのテルマエ文化

古代の柱が水中に沈むクレオパトラプール。現代の入浴客と古代ローマの遺構が共存する不思議な光景

しかし、パムッカレの魅力は決して失われてはいません。特に印象的なのは「クレオパトラプール」と呼ばれる温水プール。水中には古代の柱や建造物が沈んでおり、現代の私たちも古代ローマの遺構の間を泳ぎながら温泉を楽しむことができます。

壮大な規模を誇る円形劇場の遺構。2000年の時を経ても威容を保つローマ建築の傑作

円形劇場や浴場跡など、保存状態の良い遺構が数多く残されており、私の大好きな漫画「テルマエ・ロマエ」さながらの光景が広がっています。ローマ帝国のテルマエ文化がこの地で独自の進化を遂げ、石灰棚という特殊な自然環境と見事に調和した温泉保養地として発展してきたのです。

パムッカレの今

妻をモデルに撮影した石灰棚の風景。限られた水域で残された美しさを切り取った一枚

水量は減少しているものの、残された水域では今なお美しい景観を見ることができます。人の少ない場所を探して撮影すれば、パンフレットのような写真も可能です。観光地として賑わう中でも、静かな場所を見つければ、パムッカレ本来の神秘的な美しさを切り取れます。

未来への課題と希望

この世界遺産が直面している環境問題は、自然資源の保護と観光振興の難しいバランスを私たちに問いかけています。2000年以上もの間、人々の憩いの場であり続けたこの貴重な遺産を、いかにして次世代に引き継いでいくのか。

今でこそ水量は減っているものの、クレオパトラプールではいまも大勢の人が古代ローマの温泉文化を楽しんでいます。観光案内やSNSで見かける真っ白な石灰棚に青い水が流れ落ちる、あのインスタ映え間違いなしの絶景―。きっと多くの人が「パムッカレといえばコレ!」というイメージを持っているはず。

太陽に照らされた真っ白な石灰棚。乾燥した地形にも独特の美しさが宿る

実際に訪れて、期待通りの写真が撮れなかったのは少し残念でした。でも、苦労して見つけた水のある場所で撮った写真は、その分思い出深いものになりました。この景色が、いつか昔の姿を取り戻し、未来の旅行者たちも「パムッカレに行ってよかった!」と心から思えるような場所であり続けてほしい。そんな願いを込めて、シャッターを切りました。

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