トルコ旅行 Day5 神秘の旋回舞踊と薔薇の香り ―コンヤのメヴラーナ博物館―
事前の下調べもなく訪れたコンヤのメヴラーナ博物館。
深く知らなかったこの訪問が、イスラム神秘主義の世界への扉を開いてくれました。
神秘的な建物との出会い
13世紀末に建設されたこの建物で、最も目を引くのは高さ約25メートルのエメラルドグリーンの円錐形の塔、「クッベトゥル・ハドラー」です。この特徴的な塔は「緑の円天井」とも呼ばれ、建物全体のシンボルとなっています。実は、ホテルで目にした不思議な「踊る人の像」の謎も、この建物で理解できました。
旋回する祈り ―メヴレヴィー教団の世界―
この博物館に祀られているのは、正式名称を「メヴラーナ・ジャラーッルディーン・ルーミー」という、イスラム神秘主義教団メヴレヴィー教団の教祖です。1273年の彼の死後、息子のスルタン・ヴェレドによって教団が組織化され、その精神性は今日まで受け継がれているそうです。
「セマーハーネ」と呼ばれる特別な空間で行われる旋回舞踊は、この教団の最も特徴的な修行方法です。
右手を天に、左手を地面に向けながら回転するその舞踊は、アッラーからの恵みを地上の人々に分け与えることを表現し、宇宙の法則を象徴するその回転運動は、アッラーとの一体化を目指す瞑想的な実践とのことです。
現在では「メヴレヴィー教団のセマーの儀式」としてユネスコ無形文化遺産にも登録されています。
ガイドさんによれば、ルーミーは通常なら数分で目眩がするような回転を、なんと2時間も続けたという逸話が残っているそうです。
豪華な霊廟と驚くべき収蔵品
博物館の中心となっているのは、メヴラーナ・ルーミーの豪華絢爛な霊廟です。その周りには家族や重要な弟子たちの棺も安置されており、13世紀当時の威光を今に伝えています。
特筆すべき収蔵品の中で圧巻なのは、数千冊にも及ぶ手書き作品のコレクション。しかし、最も神秘的な体験となったのは、預言者ムハンマドの聖遺物との出会いでした。
ガラスで仕切られた箱の中に収められているのは、預言者ムハンマドのあごひげ。
小さな穴が設けられており、そこから覗き込むと薔薇の香りが漂ってくるのです。実際に確かめてみると、確かにかすかな薔薇の香りが...。
これは人工的なものなのか、それとも預言者の体から漂っていたという薔薇の香りの名残なのか。その謎も、この場所の神秘性をより深めています。
現代に生きる伝統
現代のトルコにおいて、メヴラーナ博物館は単なる観光地以上の存在です。イスラム神秘主義の精神性を今に伝える重要な文化遺産であり、多くのトルコ人にとって深い精神的意味を持つ場所となっています。
事前知識なく訪れた博物館でしたが、その神秘的な雰囲気、13世紀からの宝物の驚くべき保存状態、そして随所に見られる豪華な装飾の数々は、私の予想をはるかに超える感動を与えてくれました。コンヤを訪れる機会があれば、ぜひともこの不思議な魅力に満ちた博物館への訪問をお勧めします。